一連のIT業界(SI)に関する多くの方のブログを読むにつれ、ビジネス屋(管理志向)と技術屋(現場志向)の温度差が改めて浮き彫りにされたような感があります。
「コミュニケーションって大事だよね」という声と、「ワクワクするようなプログラミングを求めてるんだよ」という声は、決して同じ方向を向いているとは言い難い。
これを読んでいる皆さんはお分かりの通り、現在の私は管理屋としての意見を通しています。それは、SIerにハイレベルの実装屋はほんの一握り存在すれば十分だからです。
アーキテクトもプログラマも、一部の人がしっかりと設計を行ってさえいれば、あとはその他大勢でできるだけ安価に仕上げるというのがSIerのベーシックストラテジーになっています。
ニッポンIT業界絶望論およびIT業界進化論によるこれまでの議論の流れについて、私なりにIT業界に携わろうという人にメッセージを送ります。主題と異なるため、本エントリーではなくリンク先に載せておきます。
(参考:IT業界に携わろうという人へのメッセージ)
→ http://it-ura.seesaa.net/article/66189002.html
それから、大手のSIerと優れた技術を有する一部ソフトハウスはSIer2.0のステージを目指して積極的に活動していますが、それ以外(大部分のソフトハウス)については、大手に吸収合併された方が業界の健全性が高まるだろうと私は考えています。
正直、安価な工数だけを売りにしている生産に乏しい企業は、従業員もクライアントも満足させるような環境を生み出せないと思うのです。
なぜIT業界がこのような激動に晒されているかを考える上で重要なのが、"産業化"というキーワードでしょう。SIは産業化の域に達しようと成長を続けています。産業化の中心となる「自動化」「大量生産」をIT業界に当てはめてると、前述のSIerの基本戦略になります。
その中でも最も産業化に近い領域といわれているのが、"システム運用"であり、同時に、最もぞんざいな扱いを受けているところでもあります。
システム運用の世界は、私が知る限り、IT業界の最下層と呼んでも過言ではない領域です。これはもう本当に間違いない。
まず、運用担当者の単価が安い。東京都が公表しているソフトウェア技術者の人件費によると、オペレータ平均単価は月90万円前後、運用管理者(現場リーダークラス)でさえ120万程度です。
大手SIerの上級SEが月150万円over、コンサルが200万overであることを考えると、その安価さが際立ちます。そして、単価の安さは給与の安さに直結します。
これをダイレクトに影響を受けるのが人材のクオリティです。大体前述の給与条件ではスキル的に未熟な人材しか集まりません。現場で経験を積ませても、一定レベルに達するともっと条件の良い領域に人材流出してしまいます。よって、いつまで経ってもスキルレベルは高まりません。
人材のクオリティは内部調達においても懸念が生じます。システム開発に携わる多くの人間は運用組織に属することを拒絶するのです。彼らの多くはプログラミングや設計、アーキテクチャデザインがやりたいのであり、他人が作ったシステムのお守りなどしたくないのです。
するとどうなるか。
社内評価の低い人間を無理やり押し込む、という行為が発生するのです。私の知る限り、こういった形で集められた方々はモチベーションも低いため、ますます運用組織の評判は悪くなります。
しかし、この状況はあるべき姿ではありません。SIを行う上で、システム運用というのは最も重要なフェーズであり、ビジネス的にも最もお金につながる領域の仕事です。
例えば、10億円のシステム開発案件があったとすると、それに絡む運用は5年契約で30億円という具合に締結されるのです。
そのような重要な領域に携わる人々や組織に対する扱いが最底ランクであるということについて、私は憤りを感じざるを得ません。
本来なら、もっとも重要な役割を担うことについて、周囲はもっと敬意を払うべきです。よく業務担当者や開発担当者から暴言に近い発言や、半ば命令に近い依頼が運用組織に寄せられますが、彼らは使用人ではありません。そんなことを言う権利はない。
それでも最近状況はだんだん好転してきています。日本でも、21世紀に入ってから、世界の運用デファクトスタンダードであるITIL(アイティル)が一般化してきたからです。
(参考:ITILとは?)
→ http://it-ura.seesaa.net/pages/user/search/?keyword=ITIL
ITILで運用組織の役割を見直すところが増えてきましたが、まだまだ地位向上の道は始まったばかりです。