IT業界は、残業代のおかげで高給取りが多い印象がありますが、実際に
はかなり悲惨な状況を余儀なくされている人々がいます。
例えば、「システムの要件定義を行う」、「設計・開発を行う」、「運
用管理を行う」、そういった役割の人は意図するしないに関わらず残業
が発生し、”基本的”には残業の対価が支払われます。
※例外扱いの仕事も残念ながらありますけどね
人によっては基本給と同等以上の残業代を手にすることもあり、それゆ
え実際に高い給与を得ているケースがあるのですが、役割の特性から残
業があまり発生しないものもあります。
その役割はシフト制のため、決められた時間になると別の人員と交代し
ます。抱えている仕事はそのときに引き継ぐため、残業はほとんど発生
しません。
いったいこの役割が何か分かりますか?
そうです、監視業務を主とするオペレータです。
→ http://it-ura.seesaa.net/article/66772640.html
国内で単純なオペレータ業務を提供している業者はかなり多く、彼らの
多くはIT業務に対する高度な知識は持っていません。
東京都内であれば70万円〜80万円が人月単価の標準価格と言われている
ので、それだけ見ると結構お金をもらっているように見えますが、会社
の間接コストや中間搾取マージンをさっぴくと、だいたい個人の手元に
は50%程度しか残りません。
70万円貰っているオペレータは、70万×50%=35万円 が支給額と考え
てよいでしょう。
そこから所得税など控除分(15%程度)を除くと、
35万×85%=約29万円
これが手取額になります。これだけ見ると、12倍すれば年収300万円を大
きく超えますが、昨今では国外アウトソーシングの流れもあり、とてつ
もない金額での業務提供を要求されることが増えています。
中国では業務オフショアの引き受けを盛んに行っていますが、特に運用
監視業務に従事する人々の単価が安価でして、なんと人月単価が40万円
を切るところが当たり前に存在しています。
ただちに全ての運用業務が国外へアウトソーシング可能になるというこ
とはありませんが、それでもかなりの作業ボリュームがオフショアに持
っていくことができるのは事実です。
昨今の運用監視サービス提供業者は、この価格帯と戦っていかなければ
競争に勝てなくなってきています。
40万円という単価を国内で実現しようとすれば、オペレータの手元にの
こる収入は、40万×50%×85%=17万円!しかありません。
現状の市場動向からすれば、ただちにこの単価を受け入れる国内業者は
いないと思いますが、数年後はどうなっているかわかりません。
もしも受け入れられてしまったら、月収17万円というアルバイトレベル
の収入で生活を送らなければならない低所得層を生み出すことになって
しまいます。
200万円以下の年収であなたは暮らしていけますか?
できないことはありませんが、かなりの節制が必要な生活となります。
おそらく、家庭を持って育児に励む余裕はないでしょう。
年収200万円を下回ると、生活は負のスパイラルに陥り、不健康で教育も
不十分、家庭環境も悪化することが昨今の状況から明らかになってきて
おり、このままでは明らかに日本社会は悪化の一途を辿ることでしょう。
国内業者は、単なるモニタリングサービスのマンパワーを提供するので
はなく、付加価値のある高度なサービスを提案・提供するようにシフト
しなければ、この状況は打破できないと思います。
「中国は工場(労務)を提供し、インドは技術を提供する」
そんな言葉があります。しばらくすれば、中国側の単価も跳ね上がり、
価格競争力も落ちてくることは予想できますが、そのときはベトナムや
タイがその代わりになるだけです。
トーマス・フリードマンが提唱した「フラット化する社会」の通り、世
界を席巻するグローバリゼーションによって、もはや生活に密着した仕
事を除き、世界中の企業がライバルになりつつあるこのご時世。
願わくば、日本のオペレータ業者も戦略的サービスを提供できる存在に
なれるよう、合従連衡を繰り返して強くなることを。
posted by 吉澤準特 at 16:39
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