IT業界の商慣習が他の業界とどれほどの差があるのか、正確なところは分かりませんが、1000万円の新品機器を300万円で売ることも珍しくないこの業界、少なくともかなりの不合理に満ちたものであることは間違いありません。
「標準価格と提供価格」という以前のエントリーでこんなことを書きました。
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http://it-ura.seesaa.net/article/3158083.html『ある通信企業にサン社のSun Fire V880を2台納品したときには、総費用は以下の通りでした。
標準価格: 1260万円
提供価格: 950万円 (25%引)
それに対し、某小売企業に同等製品を納品したときは、880万円程度だったと記憶しています。70万円もあれば、プログラマーを一人追加で1ヶ月雇えますよね。
まだこのサーバは良い方でして、大規模なネットワーク構築にもなれば、70%ディスカウントをしてくる通信キャリアもいるのです。最早、標準価格の意味なんてあるのでしょうか? というか、標準価格で購入したことのある企業っているんですか?』
値引率が大きいと、なんとなく得をした気になるのが人間の心理です。
しかし、値引きが常態化してしまう&客によって値引率が異なるという状況では、もはや正規価格の本質的な意味は何もありません。単に、資材部や購買部の形式的な値下げ努力の指標として見ることができる程度です。
一方で、値引き自体が悪だと思われている業界もあります。その典型がコンビニエンス業界。セブンイレブン報道で惣菜・弁当を含めた値引き容認の流れができつつありますが、それでもまだまだ定価販売による業界モデルの維持に力を入れています。
セブンイレブンは09年の8月に次の値引き指針を設けました。
(1)原価を下回る価格にした場合は加盟店が自己責任で損失を全額負担
(2)値引きを開始できるのは販売期限の1時間前から
恒常的な値引きを容認してしまうと、次から客はその価格で購入することが当たり前だと思うようになりますから、その対策として廃棄1時間前になった時点でようやく値引き(投売り)を許しています。
消費者利益という観点で公正取引委員会から排除命令を受けているセブンイレブンの強気(?)の姿勢をもしもIT業界でも実現することができれば、きっとこんな営業が可能になることでしょう。
・基本は標準価格で販売で値引きは認めない
・EOL(ベンダー保守期限)が公式発表された製品のみ値引き可能
・ルールを破った代理店は代理店契約を取り消す
すごいですね、こんな状況になったらIT業界というか、製品ベンダーは仕事をどんどん無くしていくことでしょう。上に乗っかるアプリケーションはカスタム開発したほうが断然安価になるでしょうね。ハードウェア機器にしたって、償却が終わっても使い続ける文化がさらに一般的になるでしょうし、企業の売り上げに対するIT支出は今よりも大きく増えるに違いありません。
しかし、そもそもの標準価格が高すぎるのがいけないのですから、最初からある程度値引きされた金額を提示していれば、あながち悪くない市場が形成されるように思えます。
値引き販売を認めなかったセブンイレブンが責められている理由はロスカットのオーナー負担なのですから、同じことがIT製品の販売代理店で起こらなければ問題ないかと。
セブンイレブンの話がホットだったので、ちょっととりあげてみました。
posted by 吉澤準特 at 12:31
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