「コンサルタント業は虚業だ。」
「奴らは、こちらが用意したものを机上でこねくりまわし、資料を作っておしまい。現場のことを何にも分かっていないから、経営層にもトンチンカンなことを言って、状況をさらに悪化させる。考えるだけの楽な仕事だよ。」
そういった声を私も時々耳にします。
そもそも「虚業」とは何かを整理しておきましょう。この言葉は「実業」とセットで使うことが多いです。知人やWebから見聞きしたかぎりでは、次のように示すことができます。
・実業
→具体的なモノを生み出す仕事
・虚業
→具体的なモノを何も生み出さない仕事
→他人が何かを生み出せるよう手助けする仕事
多くの人の感覚では、他人のフンドシで何かをするのは虚業だと捉えているようです。そういう意味では確かにコンサルタント業は虚業ですね。何せ、他人がやっていることに対して助言したり、これからやろうとすることについて計画を立てたりすることが生業なのですから。
この認識に対して、あるコンサルタントはこう語ります。
「もとが誰のフンドシなのかで仕事の質に優劣をつけて貶めるのはおかしい。たとえば、「机上でこねくりまわし、資料を作っておしまい」というシンプルな表現の裏側には、様々なデータを突き合わせて納得できるストーリーを作り上げるために努力しているコンサルタント達がいる。現場から上がってくる情報は断片的なものが多く、整合性の取れたひとまとまりの情報を作り上げるのは、思いのほか手間が掛かる。」
「もちろん、出てきた資料が後続フェーズで使えない代物というなら話にならない。ただ、使えない代物になってしまっている原因は、クライアント側にもある。社内担当者が変わってしまったから内容が分からない、社内展開がうまくできなかったから、改めて計画修正が必要になってしまった。そんな理由が多いのも事実だ。」
このコンサルタントの主張のポイントは、別にコンサルタント業が虚業か否かという話ではありません。虚業という貶めた見方をするヒトの仕事への姿勢について、「そのスタンスでいいのか?」という疑問を呈しているのです。
実行フェーズには関与しないという点に注目して、現場を知らず、モノを生み出していないと軽んじる姿勢を批判は確かによろしくないと思いますが、実際の世の中は虚業に対してますます風当たりが強くなっていますし、殊に、IT業界では、計画フェーズと実行フェーズの両方を責任をもって推進してくれる外部パートナーの存在が強く求められています。
クライアントが成熟し、賢くなればなるほど、計画フェーズの内製化が進みます。ピンポイントでのアドバイザリー業務は残ると思いますが、企画立案だけをする外部業者はどんどん仕事の規模が縮小していくだろうという予想は、昨今のジョブで私が持ち得ているものです。
大企業には、コンサルティング業を「虚業」と言って切り捨てるくらいの内的成熟が求められています。そして、コンサルティングファームは、虚業だけに留まらない実行力が必要です。これからの10年、コンサルティング業界の仕事は大きく変容するかもしれません。
参考までに、Web上で数多にあるコンサルタントの虚業論をまとめたエントリーを紹介しておきます。
http://d.hatena.ne.jp/yo4ma3/20100802/1280764001
論点は以下のとおり。
* 他人への貢献度が高いか、否か
* クライアントが自分で出来るか、否か
* 成果に再現性があるか、否か
* 後に引き継ぐ人のことを、考えた仕事をしているか、否か
* 価値が発生する"場"がサービス提供の場か、否か
* 価値の測定ができるか、否か
* 実行するか、否か
* 作業内容を秘密にするか、否か
* 成果が形に残るか、否か etc
posted by 吉澤準特 at 14:06
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