草食系男子。
そんな言葉が世間に浸透し、それを受け入れる土壌が形成されつつあるように思える昨今ですが、見方を変えると、積極性を失った若年層が増加していることへのやむを得ない反応と捉えることもできます。
日本人の国民性をもって、これを当然と受け止めてしまう考え方もあると思ってしまいがちですが、好奇心、向上心、競争意識はここ数年で減衰していることはデータとして明らかになっており、厚労省の労働経済白書では次のような調査報告がなされています。

・楽しい生活をしたい
1984年 :29%
2004年 :37%
・経済的に豊かになりたい
1984年 :28%
2004年 :22%
・自分の能力を試したい
1984年 :29%
2004年 :24%
保守的な業界ならいざ知らず、グローバルに戦場を移している大手企業や、それら企業をサポートする周辺ITベンダー企業は、淡々とした草食系よりもガツガツした積極性を持つ肉食系の方を好みますから、昨今の若年層の性格変化は採用活動において看過できない状況なんですよね。
しかし、視点をローカル(国内)からグローバルに向けると、そこには積極性のある、しかも語学の壁をものともしない人材が意外なほど多く存在しています。そして、昨今の企業はそのことに気付き始めました。
それは中国の新卒労働市場です。
この市場には優秀な新卒の肉食系がゴロゴロしており、中国語と英語のバイリンガルはざらにいます。短期間で語学習得している学生が多いため、就労後に日本語の勉強をすれば、十分実践的な語学力に達するとのこと。
このことはasahi.comの記事で端的にまとめられています。
『日本の企業が、本格的に中国で大学新卒者の確保に動き出した。年630万人という世界最大の市場に狙いを定め、日本本社の幹部要員として採用する。
(中略)
「安定志向の草食系が多く、戦闘意識の強い野武士タイプが減っていた」と内田氏ボストンコンサルティンググループ・パートナー)。それで中国に来てみたら、「負けず嫌いで、競争意識の強い、我々の大好きなタイプがうじゃうじゃいた」
面接に来た学生の大半は一度も海外へ行ったこともないのに英語を滑らかに話す。日本語など、素地があるから内定後に学ばせれば十分という考え方だ。中国の学生は転職意識が高いのがリスクという人もいるが、内田氏(は「日本でも2〜3年で辞める草食系エリートは多い。定着するかは会社次第だ」と意に介さない。
(中略)
BCGの内田氏はいう。「優秀な外国人を採用することで、日本人の目の色も変わるだろう。グローバルでの競争意識に目覚め、学生も社員も危機感を持ってくれれば成功だ」』
(中国で新卒争奪戦 日本企業、「負けず嫌い」求める)
(http://www.asahi.com/business/update/1120/TKY201011200289.html)
ネット上では、日本衰退を加速させるだとか、中国人材は不誠実であるなどの意見も散見されますが、これはトンチンカンな考えと言わざる得ないでしょう。
本社採用される外国人はどんな企業にもいます。グローバルとの関係性が高い企業ほど、その割合は多いでしょう。加えて、どんな国にも勤勉で優秀な人材は存在するわけで、前述の活動は、そういった人材を獲得する動きなのです。日本人にだって不誠実な働き方をする人はいますから、これは割合の問題です。
そもそも、今問題になっているのは、個人主義であれなんであれ、最前線に立って戦う人材が企業内に不足しているという点です。このようなポジションに当てはまる可能性がある人材を、人数の多寡はありますが、たいていの企業は欲しているのです。
にもかかわらず、合致する人材が国内では見当たらない。だから自己主張の強い人材が育ちやすい大陸に目を向けているのです。
今年の冬から就職活動を始める学生の皆さん、現状の企業における下記の構図を覚えておいてください。
(企業が求める人材)
・肉食系の募集枠:少 ←応募する学生数:極少
・草食系の募集枠:多 ←応募する学生数: 多
協調性や和の精神で内定を勝ち取ることはもちろんできるでしょう。でも、倍率は相当高いはずです。でも、競争心を全面に押し出したスタイルで内定を勝ち取ることは、それよりは幾分容易。会社に入ってからも、肉食系が少ない職場が増えてますから、必ず重宝されます。
最後に一言。そうは言っても、本当に協調性のカケラもない人材が増えてしまっては企業は困ってしまいます。企業が求めているのは、謙虚さを兼ね備えたクレバーな(賢い)肉食系。内定の多い学生はこのタイプが多いです。
今年の冬は「クレバーな肉食系」を目指しましょう。
posted by 吉澤準特 at 23:06
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