成果主義という言葉を聞いてあなたは何を思い浮かべますか?
この言葉が世の中で幅をきかせるようになったのは90年代末の頃でした。バブル崩壊によって経済が停滞し、かつての日本式企業経営からグローバル企業の仕組みへ移行しようと企業が動き始めた時期と重なります。IT業界では富士通が成果主義を導入して話題になりました。
成果主義を導入していない会社は閉鎖的でネガティブなイメージで語られるようになり、手柄をいくら立てても大きな評価がされない若手の意識を奮い立たせ、人材の積極的な活用に動き始めた頃だということも出来るでしょう。
しかし、成果主義を導入して成功している企業のカルチャーや従業員の考え方を理解しないまま、形だけの導入で終わってしまった企業は山のようにあり、先日ニュースで報道された日本マクドナルドもその一つになってしまいました。
日本マクドナルドは2006年に同仕組みを導入し、合わせて定年制を廃止しましたが、2012年からは以前の形に戻すことを決定したとのこと。その理由を次のように発表しています。
「若手社員を伸ばしていく企業文化を根づかせていくため、年功序列を廃止するなど、実力主義への意識を高めようとしたなかで、定年制を廃止すべきと考えたが、時期尚早だった」
「ベテランが職務に取り組むうえで、仕事の成果と人材育成のバランスのとり方が難しく、仕事の優先順位が崩れてしまった。(定年制を復活することで)人を育てていく企業文化を再度築き上げる」
もっともらしく聞こえますが、この発言をそのまま額面通りに受け取るのは軽率です。もう一段掘り下げて、その原因を追求してみましょう。
例えば、あるブログでは次のような成果主義の分析をしています。
・日本がお手本とした外資は客観的な成果主義などやっていない
・外資は客観的な情報は参考程度、現場責任者が主観的に成果を評価する
・外資は現場をわかっている現場責任者が人事権も持っている
・日本は現場責任者に人事権が無く、一方人事担当は現場をわかってない
『本当の「成果主義」とは、「成果を出したものが報われる」という評価システムのはずだ。これをやるためには、現場責任者はもちろん、末端の社員レベルにまで、「権限」と「責任」を委譲するということが不可欠だろう。「権限」を与え、自由にふるまって成果を出してもらう。しかし、そこには「責任」もともなう。』
『つまり、個人に「責任がなく、権限もない」という中央集権的・全体主義的な日本方式では、そもそも「成果主義」はできるはずがないのだ。』
これはまったくその通り。評価対象者の直属の上司やその周りの上役からの評価を見ずして、本当のパフォーマンスを知ることはできません。営業成績やクライアントからの満足は重要ですが、社内組織に対する貢献(人材育成やイベント協力など)も評価すべき対象にしなければ、誰も人材を育成しようとはしないでしょう。
成功している成果主義企業が多くないことは確かですが、それは前述の点を企業の人材評価部門が十分な理解をしていないからです。その証拠に、純然たる国内企業の花王は成果主義の導入の成功事例として知られています。
日経ビジネスでは、花王が成功したポイントを次のように紹介していました。
- 会社の目標と社員の目標との関連を「見える化」する
- 人材育成と一体のものとして運用する
- 結果だけで評価せず、報酬にも極端に差をつけない
- 自社や部門の実情に合わせてカスタマイズする
- 他社の真似をせず、コンサルタントの言いなりにもならない
- 経営環境の変化に応じて制度をカイゼンし続ける
- 経営理念を社内に浸透させる目的にも利用する
「報酬に極端な差を付けない」という点を意外に思う人がいると思いますが、日本に住む人々のマジョリティは横並びを好むため、あまりにも報酬に差をつけると、逆にモチベーションを極端に下げる原因になるのです。
私が知る外資系企業の多くも、実は報酬にそれほど大きな差はつけていません。上位2割レベルと平均レベルを比較すると、サラリーの差は10%程度です。そのかわり、金銭面ではなく職務権限の拡大などで社員を優遇し、ますます大きな仕事をしてもらおうと仕向けるわけです。
あなたのいる組織は、そういったことを考えた人材育成策を採用しているか、一度調べてみてはどうでしょう。
posted by 吉澤準特 at 00:52
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