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2013年05月21日

官公庁が情報システム半減に取り組む前にやるべきこと
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2013年5月20日、政府は省庁情報システム半減をIT戦略の工程表へ盛り込むことを決めました。主に、省庁ごとに存在している人事給与システムを共通化するなど、情報システムの統廃合を行うことで経費を3割削減する見込みとのことです。

『政府は20日、人事や給与など、省庁が個別に管理・整備している1500の情報システムを統廃合し、半減させる方針を固めた。』
http://www.yomiuri.co.jp/net/news0/politics/20130520-OYT1T00703.htm

官公庁の情報システム関連経費(IT予算のうち、維持管理に必要な費用)は、2013年度で5319億円ですから、この3割にあたる約1600億円を恒常的に削減可能という考え方になります。

一般企業であれば、年間総売り上げの1.5%程度がIT予算になるとの統計結果がJUAS(日本情報システムユーザ協会)から示されており、さらにその予算の7割が既存システムの維持管理費になると言われています。

システム統合によるITコストの圧縮効果は、維持管理費の比率を7割→5割へ押し下げる効果(30%の削減効果)があるといったエピソードをガートナーやアクセンチュアが述べていることを踏まえると、前述の試算はそれなりに妥当なラインであるように思えますね。


そもそも、官公庁の情報システム半減に向けた取り組みは、2010年9月にまで遡ります。当時、民主党政権では総務大臣を原口氏が務めており、そのイニシアチブのもとで「国の情報システム運用費3900億円を2020年までに半減させる」という総務省目標が発表されました。

当時のニュースを調べると、日経新聞電子版から以下の情報を拾うことができました。

『現在は中央省庁が持つシステムの数は2059あり、年間の運用費は約3900億円にのぼるという。ネットワーク経由でソフトウエアなどを共用する「クラウドコンピューティング」技術を導入するなど、コスト削減に向けた方策を議論する。総務省の調査によると、大型汎用機(メーンフレーム)の運用費が約1800億円と、全体の47%を占めた。(中略)省庁別では厚生労働省が最も運用費がかかっており、985システムで1500億円を超えた。』
http://www.nikkei.com/news/print-article/?R_FLG=0&bf=0&ng=DGXNASFS03039_T00C10A9EE2000

当時の発表と今回の発表で、システム数と年間運用費の数字がかなりずれている点が気になりますが、それはさておき、この取り組みのキーとなっているのは、霞が関クラウドと呼ばれていた「政府共通プラットフォーム」です。

2009年6月〜10年3月まで事前分析、その後、2011年年9月〜13年3月まで開発・試験を行っており、現在はeラーニング等5つのシステムが稼働しています。今回の政府発表は、この政府共通プラットフォームへ、人事給与システムや高い可用性が求められないシステムを移行しようという話になります。


前置きが長くなりましたが、こうした省庁間を横断するシステム開発の取り組みというのは、大変な困難を伴うものであることは、官公庁の案件に携わったことのある人々の共通認識であると思います。

横断活動によってシステムが共通化された場合、その発注予算と執行権限は1か所に寄せられることになるため、共通化の対象となるシステムを抱える省庁のほとんどが、予算の削減(=権限の縮小)を強いられることに反発を示すことが、その最大の理由です。ですから、省庁間の調整事が多かった総務省の関係者は、過去の政権下で大変もどかしい思いを重ねてきたものです。

ですが、民主党政権下で、良くも悪くも政治家主導のシナリオが練られ、後を継いだ自民党安倍政権も、今のところは省庁間の論理に振り回されずにコトを運んでいるように見えます。この調子で、カタチだけではない、本質的な政府共通プラットフォームの推進を期待したいですが、そのためには、情報システムに関する調達ルールの改善にも着手しなければなりません。

以前のエントリーで、分離調達を取り上げました。

『(前略)要件定義と設計フェーズを分断するのは、システム開発上のポジティブな意味はほとんどありません。むしろ、設計に責任を持たない人たちが好き勝手に要件定義を行って、絵に描いた餅が出来上がってしまうリスクを高めます。そうさせないためには、要件定義をしたベンダーが責任を持ってい設計・開発を行うように調達計画を定めなければなりませんが、今の仕組みはそうなっていません。』
http://it-ura.seesaa.net/article/351543994.html

これに加えて、共通化業務については、その決定権を既存の一省庁に集中させるのではなく、政府内でエンタープライズ・アーキテクチャの立案・構築を主導する特命組織を立ち上げ、そこにグランドデザインのとりまとめをさせる。状況次第で、永続的に独立省庁とするか、既存の省庁に統合するかを検討する。これくらいのことを実現させることが必要ではないかと考える次第です。

特に、これからますますデータ活用が重要になってくるのですから、データガバナンスと言いますか、データのサプライチェーン(データSCM)を本格的に構築することを考えてもらいたいです。

最終的にどんなことがしたいのか、という視点で必要となるデータを整理し、それを受け取るための最適なサプライチェーンを構築する、という利用者中心の考え方でデータフローを描くためには、統計情報を管理する部門も併設した方がよいですね。

米国ではオープンガバメントとして知られている取り組みを、是非日本国内でも同時に取り組んでほしいと願っています。

Project Open Data
http://project-open-data.github.io/

posted by 吉澤準特 at 10:50 | Comment(0) | TrackBack(0) | 業界裏話





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