日本の官公庁のIT活用と聞いて、みなさんはどんなイメージを思い浮かべるでしょう。
システム開発の案件に関わったことがある人なら、あまり先進的な印象を持っていないのではないかと思います。私も以前、「官公庁が情報システム半減に取り組む前にやるべきこと」というエントリーで、こんな話を書きました。
特に、これからますますデータ活用が重要になってくるのですから、データガバナンスと言いますか、データのサプライチェーン(データSCM)を本格的に構築することを考えてもらいたいです。最終的にどんなことがしたいのか、という視点で必要となるデータを整理し、それを受け取るための最適なサプライチェーンを構築する、という利用者中心の考え方でデータフローを描くためには、統計情報を管理する部門も併設した方がよいですね。
実は、総務省には”統計局”という、政府統計を横断的に体系整備する部門があります。この組織の管理下のもと、独立行政法人統計センターというところが、”e-Stat”という政府統計のポータルサイトを運営していました。
これまで、このe-Statでは、各省庁が公開した統計情報(詳細データ含む)をアーカイブしてきました。リンク体系を整備し、検索機能も付けてあるので、けっこうカンタンに政府統計情報を一元的に検索することができ、統計情報を仕事に使っている人たちからは好評を博していたように思えます。
しかし、前述のエントリーで書いたように、データの提供元となる各種官公庁からユーザーの元までシームレスに提供できる仕組みが備わっていたかと言えば、そうではありません。
たとえば、提供されるデータの多くはExcelですが、一部PDFだけの資料もありました。また、Excelシートについても、資料のフォーマットは省庁ごとにばらつきがあり、ユーザーは各自でダウンロード後、目的に合うよう、毎回各自が手元でフォーマットを加工するという手間が発生していました。
こうした状況を踏まえて問題提起をしたのが前述のエントリーでしたが、去る5/28、総務省から以下のプレスリリースが発表され、ついに政府のデータガバナンスへの本気度がじわじわと明らかになってきました。
現在、政府全体でオープンデータへの取組を推進しているところですが、これらの取組をリードする総務省として、政府統計の情報提供のかたちを更に高度化すべく検討を行い、独立行政法人統計センターと協力し、トップランナーとして次のような取組を進めています。具体的には次の3つです。
(1)API機能による統計データの高度利用環境の構築
(2)統計GIS機能の強化
(3)オンデマンドによる統計作成機能・方策の研究
今般、統計局所管の統計データについて、(1)のAPI機能の導入を6月上旬から試行運用開始します。更に、(2)の統計GIS機能強化についても、本年秋を目途に試行運用を開始する予定です。統計データの利活用を促進することで、ビジネス活性化や新規事業開発などを支援してまいります。
http://www.soumu.go.jp/menu_news/s-news/01toukei01_02000024.html
このプレスリリースで最も注目すべきなのは、「(1)API機能による統計データの高度利用環境の構築」です。
政府統計データを取得するためのAPI(アプリケーション・プログラミング・インターフェース)を公開するから、使いたい人は機能を呼び出せば、自動的にデータを受信でき、そのままシステム上でデータ加工をすることができるのです。
これはデータのサプライチェーンを自動化するための仕組みが備わったということであり、国家が集めた膨大な素データを民間企業が簡単に分析できる土壌が整ったと言えます。
今まではリサーチ機関から購入していた政府統計の分析情報も、今後は有志がインターネット上で解析済データを無料公開するようになり、リサーチマーケットにいくらかの影響を与えるでしょう。また、民間企業が直接統計データをシステムに取り込むようになり、これを利用したウェブサービスも多数発表されるようになるはずです。
このサービスはユーザー登録制で6月上旬から試行されます。興味のある方は継続的にe-Statをチェックしておきましょう。
今後、第二次安倍内閣の下、”世界最先端IT国家創造宣言”(2013年5月25日)にしたがって、オープンデータガバナンスの取り組みはさらに加速していきます。IT業界人の一人として、本政策が完遂されるよう、一貫した政府の姿勢を期待します。
posted by 吉澤準特 at 15:03
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