久々に、ちょっと何を言っているのか分からない飛ばしエントリーが来ました。日経ソフトウェアのインタビュー記事になりますが、「IT業界にいた人は使えない」との題名が冠されています。内容は次の通り。
『「うちの会社もソフトウエア開発者を必要としていて、経験者を中途採用したことが何度もありました。でも、みんなものにならない。やめてっちゃう。続いたのは長くて1年くらいかなあ」ティーピクス研究所の所長である二ノ宮良夫氏はこう語る。
(中略)
「IT業界の開発者(プログラマ)は紙の仕様書がまずあると考えている。仕様書に書かれたことをプログラムにするだけ。大きなロジックを考える力がない。私が持っているノウハウを口で伝えても、そこから自分で考えることがない」。
「どんな人ならいいんですか」と問うと「新卒採用した人は大丈夫。業界ずれしてないってことでしょうか」と返ってきた。
記者はこの言葉を、IT業界に対する厳しい批判と受け止めた。IT業界は長年、営業、SE(システム・エンジニア)、プログラマなどと職種を分割し、細分化してきた。
その結果、SEはプログラムを書けず、プログラマは仕様を書けない。顧客と営業とSEとプログラマの間で伝言ゲームと責任の押し付け合いと金の取り合いが続き、関係者は労力をさかれ、しかも顧客が喜ぶソフトウエアやシステムを作れず、IT業界を志望して入ってきた若者を「自分で考えることがない」開発者にしてしまったとしたら。我々は何か間違ってきたのではないか。』
http://itpro.nikkeibp.co.jp/article/COLUMN/20130610/483742/
この記事の問題点は2点。それは「所長発言の情報量が少なすぎること」と「記者による穿った見方が的外れな意見に結びつけられていること」です。
1点目については、所長の最初の発言が一番問題です。
「プログラマは紙の仕様書があると考えている」という発言からは、自分たちのところには紙の仕様書が無いものもありますよ、と読み取ることができますが、これが本当ならパッケージベンダーとして仕様管理が不十分と言わざるを得ません。
しかし、後半部分にある「私が持っているノウハウを口で伝えても、そこから自分で考えることがない」という発言からは、仕様書の行間に考えをめぐらす応用力に欠けることへの問題意識を感じることもでき、その場合は仕様管理はちゃんとやっているようにも思えます。
つまり、このインタビュー記事では、中途採用者側に問題があるだけで二ノ宮所長はまともなことを言っているだけなのか、中途採用者を1年で辞めさせるブラックな人なのかを判断することができません。
2点目については、記事の後半に書かれている「記者はこの言葉を、IT業界に対する厳しい批判と受け止めた」というくだりが問題です。
これは所長の「新卒採用した人は大丈夫。業界ずれしてないってことでしょうか」という発言を受けて記者が感じたことを述べている形になっていますが、この発言を無条件で正と捉えているところに誤りがあります。二ノ宮所長の会社に転職してきた中途採用者が想像力不十分なスタイルであっただけの個別事象であって、これをIT業界の構造的問題に捉えてしまうのは、ネット上で揶揄される日経新聞のiPhoneドコモ参入説並の論理飛躍でしょう。
それから、「SEはプログラムを書けず、プログラマは仕様を書けない。顧客と営業とSEとプログラマの間で伝言ゲームと責任の押し付け合いと金の取り合いが続き、関係者は労力をさかれ」という記者の見解は私も正しいと思いますが、それを「、IT業界を志望して入ってきた若者を「自分で考えることがない」開発者にしてしまったとしたら」という仮説に結びつけるのは明らかに間違っていませんか?考えようによっては、分業が進んでしまったからこそ相手の領分を想像しながら仕事をすることが求められるのだと主張することもできます。
私がこのインタビュー記事に対して言いたいことは、多分二ノ宮所長は傾聴すべき示唆を述べているのだとなんとなく推察できるものの、そう捉えることができない表現になっているので改善してほしいということです。
posted by 吉澤準特 at 05:14
|
Comment(1)
|
TrackBack(0)
|
業界裏話