「Yak Shaving」(ヤク・シェイビング)という言葉を知っていますか?
英語で説明するとこういう表現になります。
「Yak shaving is the art of doing something that you have to do before you can do something that you have to do before you can do something that you have to do before you can do something important.」
英語が得意な人でも???と混乱してしまう表現ですよね。
これは、「何か重要なことをやろうと思ったら、別の問題が発覚して、その問題に対処しようとしたら、また別の問題が明らかになり・・・」という負のスパイラルが続く状況を意味しています。ヤクという長毛の牛の毛を延々と刈り取り続ける様に例えているのです。
この「Yak Shaving(ヤクの毛を刈る)」という表現が最初に使われたのは、2000年にMITメディアラボのJeremy H. Brownという人が送ったメールだと考えられています。
この言葉がGeekな人々に気に入られ、Yak Shavingという言葉はテック系の用語として、ネット上でどんどん使われるようになりました。プログラミング界隈で海外情報をよく漁っている人々なら、オープンソース関連のコミュニティあたりで、本質的ではないやりとりがされているような場面で使われているのを見ることがあるのではないでしょうか。
一般の人々の間でもこの表現は浸透してきています。たとえば、セス・ゴーディンというアメリカの作家は、2005年に自身のブログで次の例文を紹介しています。
『(前略)
「今日はクルマのワックスがけをしたいな」
「おっと、ホースが冬から壊れたままだった。ホームセンターで新しいやつを買ってこないと。」
「でもホームセンターは橋の向こう側だし、通行料を払う必要があるからEZパス(ETCのようなもの)無しで行くのも面倒だよな。」
「まてよ、お隣さんにEZパスを借りれるよな・・・」
「でも、俺の子供が借りたクッションを返すまで、ボブのやつはEZパスを貸してくれないだろう。」
「それにクッションの詰め物が少しとれちゃったから、詰め直すためにちょいとヤクの毛が必要になるな。」
そして、いつのまにか、あなたは動物園でヤクの毛を刈っているのです。』
http://sethgodin.typepad.com/seths_blog/2005/03/dont_shave_that.html
これまでよく見られたテクノロジー寄りの例文ではなく、ノンテクノロジーの例文を示したという点で、セスのブログからGeekではない人たちの間へYak Shavingという表現が伝播していったのは面白いことです。
なお、MITメディアラボの人が書いたオリジナルの例文は下記のリンク先をご覧ください。全文を訳したりはしませんが、簡単に言うと、「ある作業をするためにソフトのバージョンを更新しようと思ったら、その前に別のソフトのバージョンをアップしなければならないことが分かり、さらにさらに・・・」という感じの話です。GNUSとか、emacsとか、MIMEエンコードとか、見るからにテック系の用語が満載ですよね。
(参照)http://projects.csail.mit.edu/gsb/old-archive/gsb-archive/gsb2000-02-11.html
posted by 吉澤準特 at 01:29
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