IT業界に住まう人々にとって、自分たちのライフスタイルは揶揄に値するほどのはかないものであると感じてしまうことは多いです。なぜなら、IT業界にある多くの会社は、クライアントの要望に基づいて製品を組み合わせたり、コーディングを行うシステム受託会社であるからです。
そうした環境で過ごしていると、この業界のブラックなところをユーモアで紛らわしたくなるものです。以前、『IT業界の悲哀をジブリっぽく言ってみた』、『プログラマのセリフをジブリっぽく言ってみた』というエントリーで、ジブリの世界になぞらえた名言(迷言)を紹介したときには、数万のアクセスがあり、皆さんの興味の高さに驚きました。
ということで、今回は童話をモチーフにしたIT系童話を紹介します。Twitterの#IT系童話タグで広まっているツイートの中から、これは面白いと思ったものを取り上げてみます。
(参考にしたまとめ)
http://matome.naver.jp/odai/2137948322189379401
http://togetter.com/li/565594
【保守案件に絡め取られたかぐや姫】
○「私と結婚なさりたいのであれば次の宝物を持ってきてくださいな。」かぐや姫はそういうと、・絶対に切れないネットワーク・絶対に落ちないサーバ・絶対に詰まらないDB・絶対に変わらない仕様・絶対に消滅しない休暇を要求しました。
→かぐや姫からすさまじい要求が出ました。インフラエンジニアの人なら分かると思いますけど、これこそまさに無理難題。かぐや姫からの強い拒絶の意思が感じられますね。
○「私は月に帰らねばなりません」おじいさんとおばあさんは必死で止めます。「なりません、かぐや姫。あなたが担当している保守案件の引継ぎがきちんと完了するまでは」
→たしかにこの状況で月に帰ってもらっては困ります。引き継ぎされなかった保守案件の悲惨さを知るおじいさんはベテランSEですね。この話の悲哀が分からない開発SEの方は、一度運用フェーズにどっぷり浸かって、保守エンジニアのつらさを痛感してください。
【開けてはいけないPCを開いた浦島太郎】
○入社1ヶ月の浦島太郎。浦島太郎は無事、研修を終え、おみやげに玉手箱をもらいました。さっそく玉手箱を開けてしまった浦島太郎。すると… どういうことでしょう。新人のはずの浦島太郎は3年目の経験者となってしまったではありませんか。
→これはよくある話ですね。一度でも経験してしまえば、あなたはその分野のエキスパートに認定されてしまうのです。エキスパートですから、一人でなんでもできちゃうのです。たとえ客先へ一人放り込まれたとしてもサバイブできるんです、運が良ければ。
○「そのノートPCは社外で開けてはいけません」、 しかし浦島太郎は約束を破りスタバでおもむろにノートPCを開き、ドヤ顔で仕事の出来る男の振りをしてしまいます。 その姿は煙のようにあっという間にTwitterで拡散され、コンプライアンス違反でクビになりましたとさ。
→ノートPCがモバイルでユビキタスでノマドなツールだというのは、SIの世界ではもはや都市伝説です。多くのPCはデスクにセキュリティケーブルでガッチリつながれているんですよ。ちゃんとセキュリティ担当者からも注意されていたでしょう?なのに、外に持ち出しちゃうから・・・
【デスマーチに追われるアリとキリギリス】
○秋になると働き蟻はせっせと仕様変更を受けて残業しますがキリギリスは遊んでばかりで仕事をしません。冬になり働き蟻は過労死してしまいますが残ったのは未解決の仕様変更とバグだらけのコードだけでキリギリスは頭をかかえます。翌年にはキリギリスも過労死しました。
→あれれ、この話って勤勉なアリは助かって、放蕩していたキリギリスは死んでしまうはずですよね。それなのになぜかアリが先に過労死し、キリギリスもやっぱり過労死しちゃいました。いつまでも仕様凍結できないウォーターフォール案件は怖いですね。
【代休を奪い合うさるかに合戦】
○おさるさんは言いました。「おい、かにさん。この炎上案件と、君の休日を交換しよう。この炎上案件は、今はただのお仕事だけど、そのうち大きな代休になる。」かにさんはおさるさんの言葉を信じて、炎上案件を引き受けました。
→クリスマス前に代休を取っている人が「この代休、去年の大みそかに出社したときの代休なんだ・・・」と呟いていたのを思い出します。その人は月に2回は休日出社をしていたはずなので、計算してみると恐ろしいことになりますね。
【デスマか失注にしかならない3匹のこぶた】
○長男こぶたは、安易な見通しで案件を受注したので、プロジェクトが炎上しました。 次男こぶたは、人海戦術で乗り切ろうとした結果、プロジェクトが炎上しました。 末っ子のこぶたは、優れたPMと無理のないスケジュールを用意した結果、プロジェクトが受注出来ませんでした。
→知恵の足りない長男こぶたと次男こぶたを教訓にして万全を期した三男こぶたではありましたが、それでは予算超過のために受注できなかったのですね。どうやってもバッドエンドでした。まあ、長男と次男の案件も大赤字ですけど、失注するよりマシでしょ。えっ、そういう考えがIT業界を悪くしているって?
○クライアントが息を吹きかけると子豚が作った要件仕様は吹き飛んでしまいました。
→こわい、こわすぎる!!あの仕様凍結の宣言は嘘だったのですか、と詰め寄りたくなりますけど、詰め寄ったところで相手に食べられちゃうだけなので、新しい要件仕様で家を作り直すしかないのです。
【バージョン管理に失敗したヘンゼルとグレーテル】
○スパゲティコードの森に置き去りにされ、道に迷ってしまったヘンゼルとグレーテル。「どうしましょう、もう元に戻れないわ」「大丈夫。こんなこともあろうかと道標を残して……なんてことだ! バックアップが上書きされてる!」
→どんなにめちゃくちゃなコードを書いたって、失敗したら前のバージョンに戻して再開発すればいいんですよ。でもね、その保存、本当に履歴はすべて保存してあるんですかねぇ。ディスク容量を節約しようとしたおバカさんが勝手に削除してたりしませんか?
【売るために炎上させるマッチ売りの少女】
○「新人はいりませんかー 新人はいりませんかー」けれども新人売りの営業から新人を買う人は誰もいませんでした。 「そうだ、このマッチでプロジェクトを炎上させれば・・・」
→新人は毎年入ってきます。経験を積ませないとベテランに育ちませんから、どこかのプロジェクトにつっこまないといけないんです。でも、役に立たない新人を欲しがるところなんてあるのでしょうか・・・そうだ、新人の手も借りたいくらいの炎上ジョブを作ればいいんですね!
【無い要件を出させる一休さん】
○殿様「夜な夜な、私の頭の中に浮かぶシステムを構築して見せよ」 一休「では殿様、頭の中から仕様書を出してください」 殿様「………」 一休「だしてください」
→いくら殿様の頼みとはいえ、こちとら受託開発なんですから、ちゃんと仕様書を提示してもらわないと作れませんよね。え、仕様は頭の中にある?ダメダメ、ちゃんと書面にしてください。なんなら要件定義フェーズから請け負いますよ〜
【進捗が遅延する鶴の恩返し】
○「私が開発している間、絶対に開発室を覗いてはなりません」鶴の言いつけを守り、お客様はじっと待ちました。時々大丈夫かいと声をかけましたが、大丈夫と返事が返ってくるので、お客様は安心して待ち続けました。納期が訪れるころ、鶴が出てきて言いました。「基本設計が終わりません」
→だから言ったじゃないですか。進捗管理はちゃんとやっておきましょうって。せめて進捗管理を毎週やっていれば、ここまで開発遅延することもなかったでしょうに。というか、工事進行基準で資産計上するのだから、工程別で納品させましょうね。
【どちらの案件もブラックな舌切り雀】
○雀『さあ、この「年収1,000万だが激務」の大きなつづらか、「年収300万だが仕事中に艦これで遊べる」の小さなつづらか、選んで下さい。』 お爺さんは小さなつづらを選びました。しかし、つづらは空っぽです。雀『年収300万で激務を選ぶなんて、偉いですね』 お爺さん『えっ!』
→大きい案件と小さい案件を選べと言われたら、やっぱり小さい方を選ぶ人が多いのでしょうか。IT業界では、どっちを選んでも炎上するので、少しでも仲間の多い大きい案件の方がいいかもしれません。一人でなんでもできちゃうスーパーSEなら、小さい方が楽しいかもね。
以上、私が読んで面白いと感じたものを厳選しました。Twitter上では現在進行形で色々なツイートが増えているので、またある程度溜まったら、紹介したいと思います。
posted by 吉澤準特 at 15:51
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