Windws XPのサポート期間が2014年4月に終了を迎えるということで、新しいOSに関する話題は盛り上がりやすいですが、ネット界隈ではモバイルデバイスの新OSが巷の話題をさらっています。
それは中国が独自のモバイル向けOSを開発し、国家の戦略的な商品として展開していくというニュースです。
『アメリカ勢によるOSのシェア独占、NSAによるPCの情報監視、Windows XPのサポート停止による影響といった現状を打ち破るため、中国科学院とLiantong(上海聯彤網絡通訊技術)が共同で開発したのが中国独自のOS「COS(China Operationg System)」です。中国科学院はCOSを国家安全に関わる戦略的商品として位置づけており、このCOSはスマートフォンやPCを含むさまざまなデバイス上で利用することができるように設計されています。
(中略)
中国科学院のウェブサイトの発表によると、COSは土台となるコードからユーザーインターフェイスに至るまで、完全にゼロから独自で作り上げたものとされており、既存のオープンソースが抱えるセキュリティ上の問題、そして海外製のOSが持つ「中国の事情への適応性の問題」を解決するものとされています。』
中国が独自開発したOS「China Operating System」が発表される
(http://gigazine.net/news/20140121-chinese-os/)
参照先の記事では、すでに10万以上の既存アプリに対応済みとのことで、あのAngry BirdsやCut the Ropeといった有名ゲームをプレイしている動画が公開されています。
この記事が取り上げている突っ込みどころは、「すでにHTC社がアジア向けに販売しているアンドロイド携帯Butterfly sにそっくりの筐体でデモプレイがされている」という点です。
画面レイアウトもButterfly sのものとそっくりであるようで、中国版Twitter上では次のような意見で盛り上がっています。
「本当の名前はChina Operating Systemではなく、Copy Other Systemだろ」
うまいことを言いますね。国家機関が率先して開発した戦略商品が、係争国である台湾の世界的メーカー商品とそっくりということで、これでは中国科学院の面目もありません。いや、むしろ海賊版大国ということで面目躍如でしょうか。
ワイアードでも紹介されていましたが、そちらではもう少し掘り下げたコメントとして、こんな意見が取り上げられていました。
「これはオープンソースではない。なぜなら彼らは、そのソースコードがAndroidと同じであることを外部の人たちに確認され、政府の金を盗んだと非難されることを恐れているからだ」
そういえば、アジア地域ではほかにも独自OSが話題になったことがありました。少し前だと、2010年に北朝鮮が発表した独自OS「Red Star(紅星)」、最近では2013年4月に中国が発表した「Kylin(麒麟)」というUbuntuベースの国産OSが登場しています。
・Red Star(紅星)
http://ja.wikipedia.org/wiki/Red_Star_OS
・Kylin(麒麟)
http://wired.jp/2013/03/27/china-to-create-home-grown-os-based-on-ubuntu/
特にKylinについては中国の戦略的商品として位置付けられており、中国政府から開発を請け負っている英国ベンダーのカノニカル社が中国市場に特化したカスタマイズをどんどん進めています。リンク先のワイアードの記事ではこんな記述がありました。
『ヴァージョン13.04は中国語の入力方法と太陰暦に対応し、天気のインジケーターが新しくなるほか、中国で人気の音楽サーヴィスをDashから横断検索できる。
今後のヴァージョンでは、Baidu(百度)の地図や、ショッピングサーヴィス大手Taobao(淘宝)を統合するほか、中国の銀行の支払い処理、電車と飛行機のリアルタイム情報などが組み込まれていく予定だ。
Ubuntu Kylinの開発チームは、中国で最も人気のあるオフィススイート『WPS』と協力して、写真編集ツールとシステム管理ツールを開発しており、これらは全世界のUbuntuのほかのフレーヴァーにも組み込まれる可能性がある。』
およそ20年前にマイクロソフトがWindowsで世界中を席巻したことを、今度は中国国内でやろうとしているのがKylinです。そして、モバイル市場で中国国内シェア90%に達しているAndroidを中国国内から駆逐するためにCOSが生み出されたと言えるでしょう。
はたして、その取り組みは成功するのでしょうか。
国産独自OSを盛り立てる動きは日本でもありましたが、現時点では大きなシェアを持つには至っていません。残念ながら、WindowsやiOSやAndroidの方がユーザーへ与える感動が大きかったからです。
今回のCOS、そしてリリース済のKylinが中国市場を席巻できる可能性があるとするなら、それは中国の市場ニーズを徹底的に織り込んだドメスティック化によるものでしょう。
かつての日本製品と同じように、猿真似と呼ばれながらも、徹底的な利便性の追求を果たすことができるなら、国策と組み合わせることで、中国13億人の市場で巨大なシェアを握ることも十分考えられると思います。
なお、COS搭載携帯電話は2014年上半期に登場予定だそうですよ。これから半年はCOSの動向が気になります。
posted by 吉澤準特 at 16:26
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