「子供たちが大人になる頃、その65%はまだ存在していない職業に就く」
この言葉は米国のデューク大学研究者であるキャシー・デビッドソンが2011年にニューヨークタイムズに対して語った言葉です。ちょっと大げさに思えますが、およそ10年前と今とで比べてみると、たしかに変わっている職業はいくつも見つかります。
例えば、レンタルビデオ店はビデオ・DVD・CDのレンタル利用者がまだたくさんいましたが、インターネットを利用した高速データ通信の普及によって、今ではオンライン上でのオンデマンド配信に置き換わりつつあります。
IT業界の中でみても、その言葉に感じるものがあるでしょう。例えば、システムの根幹をなすデータベースについて。2003年にはOracle9iのRDBMSが全盛でDBチューニングはベテランのノウハウが活きる領域でしたが、2013年では設定値は半自動で決まってしまいますし、RDBMS以外のデータベースも随所で使われており、求められてくる知識がかなり変わってきています。
この話を突き詰めると、IT化によって新しく創出される仕事もあれば、逆に消えてしまう仕事もあるということに気付くでしょう。これについて、英国オックスフォード大学では「雇用の将来」という非常に興味深い調査レポートを発表しています。
(各職業はコンピュータ化が進むことでどれほど影響を受けるか?)
(HOW SUSCEPTIBLE ARE JOBS TO COMPUTERISATION?)
→ http://it-ura.seesaa.net/article/386567049.html
このレポートは、今後20年のIT化の影響で、米国における702ある職業のうち、およそ半分が失われる可能性があることを述べている、なかなかショッキングな内容になっています。
この分析は、ガウス過程と呼ばれる分析法を使い、IT技術によってその仕事が置き換わってしまう確率を計算しています。分析の結果では、なんと米国の総雇用の47%が失われるとのこと。その傾向としては、賃金と学歴が低い職業ほど、その影響を顕著に受けるそうです。
少々読みづらいフォーマットで書かれた英語のレポートですが、すでにソーシャルデザインネットさんが要旨を解説してくれているので、そちらの内容を紹介しておきます。
<コンピューターによって代替される可能性の高い仕事TOP20>
→ http://social-design-net.com/archives/9672
※ワースト10を抜粋
693位 新規顧客アカウント作成スタッフ
694位 写真処理労働者及び加工機オペレーター
695位 税務申告者
696位 貨物の荷積みスタッフ及び代理店
697位 時計の修理工
698位 保険引受け業務
699位 数理技術者
700位 裁縫師
701位 タイトル審査・調査
702位 電話営業
これらの作業は、内容が単純なのでIT化しやすいという面を持ち合わせています。
他にも、データ入力者(キーパンチャー)、購買部事務職、電話オペレータ、レジ打ちといった納得の職業から、レストランのコック、ウェイター、農業検査官、自転車修理工、ツアーコンダクターなんて職業もIT化で仕事が失われる可能性が高いと判断されています。
この流れは、産業化が進むことで熟練労働者の仕事がどんどん機械に置き換わっていった事実と同じものです。現代では、IT化の進行がホワイトカラーとブルーカラーの仕事をコンピュータに置き換えていっているのです。
このレポートが示唆しているのは、そうした職業に就いている、もしくはこれから志すならば、「IT化の影響を受けにくい立場で仕事をする努力をしていきましょう」ということです。さもなければ、その職業を生涯全うすることは難しいでしょう。
最後に、IT化によって仕事が失われることはないと考えられるベスト10を示します。
1位 レクリエーションセラピスト
2位 最前線のメカニック、修理工
3位 緊急事態の管理監督者
4位 メンタルヘルスと薬物利用者サポート
5位 聴覚医療従事者
6位 作業療法士
7位 義肢装具士
8位 ヘルスケアソーシャルワーカー
9位 口腔外科
10位 消防監督者
ご覧の通り、人の心に働きかける職業や、常に最先端の技術を扱う職種がランクインしています。ITに仕事が取って代わられるリスクを避けたいなら、こうした方向性を目指すというのが一つの解になるでしょう。
posted by 吉澤準特 at 03:08
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