IT業界でデスマーチといえば、当初計画の無理がたたって膨大な残業を
生み出しているプロジェクトを指しますが、これについて秀逸な皮肉記
事があったので紹介します。
1. プログラマーからシステム・エンジニアへ
「このプロジェクトは無理です。大きなデザイン変更を強いられる上、
うちのチームにはこのシステムのデザインについて知る者は誰もい
ません。それにうちの会社にこのアプリが書かれた言語を知る人もい
ません。
個人的な見解を申し上げますと、当社でこのプロジェクトを絶対に引
き受けるべきではありません。」
2. システム・エンジニアからチーム・リーダーへ
「このプロジェクトはデザインの変更が必要で、現在うちのスタッフに
経験者はおりません。言語も見慣れないもので、この仕事を引き受け
るなら、そのための研修が必要だと思います。
個人的な見解を申し上げますと、こういったタイプのプロジェクトを
引き受けるには準備が十分ではありません。」
3. チーム・リーダーからプロジェクトマネージャーへ
「このプロジェクトはデザイン変更がシステム内で必要で、私たちはこ
の案件に対する専門的な経験がそれほどありません。さらに社内にあ
まり多くの人が相応しい研修を受けていません。
個人的な見解を申し上げますと、通常より完成には時間が要するもの
と思われます。」
4. プロジェクトマネージャーからシニアマネージャーへ
「このプロジェクトはデザインの再構築が必要です。幾人かは経験があ
り、数人は実装言語がわかります。なのでわかるものが他のものを研
修させればいいかと思います。
個人的な見解を申し上げますと、このプロジェクトは要注意ですが引
き受けるべきだと思います。」
5. シニアマネージャーから社長へ
「このプロジェクトは我々がレガシーなシステムのデザイン変更が可能
だということの、業界へのデモンストレーションとなるでしょう。プ
ロジェクトを成功させるために必要なスキルと人材はそろっており、
数人はもう自宅研修が終わっています。
個人的な見解を申し上げますと、どんな状況においてもこのプロジェ
クトを逃すべきではありません。」
6. 社長からクライアントへ
「私どもはこの手のプロジェクトのエキスパートです。現在まで多くの
似たようなプロジェクトを、多数の大手クライアントさん向けに手掛
けてきました。この種の仕事は他社に負けません、ぜひとも我々にお
任せください。
個人的な見解を申し上げますと、このプロジェクトは我々なら期限以
内に仕上げられます。」
(記事引用)
http://news.livedoor.com/article/detail/3840678/ http://www.laughitout.com/2008/09/bottom-up-approach.html こういったコミュニケーションが行われている会社、かなり多いのでは
ないでしょうか。
最も現場寄りの人間が「困難だ」と言っているのに、それをインポッシ
ブル(不可能)ではなくディフィカルト(難しいけどできないことはな
い)というニュアンスで捉え、後は都合の良い思考に流されて導き出さ
れた結果が前述の1〜6です。
IT業界で営業サイドに近い仕事をしていた方は、こういった流れを一度
は経験したことがあるのではないでしょうか。
ところで上記の流れはプログラマーから見たマネジメント層への皮肉で
あり、問題提起と捉える事も可能かもしれませんが、実は逆のパターン
が起きるケースもあります。
マネジメント層が「やるべし!」とシュプレヒコールをあげても、現場
が冷え込んだ状態で、
「おいおい、また余計な仕事が増えちゃうよ」
という後ろ向きのスタンスを持つ人が多い職場もありますよね。組織と
いうものは変化を望まずにあがなう性質があり、ある程度は仕方のない
ことではありますが、状況認識に乖離があるという点では冒頭のプログ
ラマーの悩みをクライアントが持つ訳です。
そうすると、業務要件が反映されていない使えないシステムのできあが
るのは皆さんも経験でご理解頂けると思います。
以前のエントリーで紹介したこちらの話ですね。
http://weblog.cemper.com/a/200309/09-typical-project-life.php このような壁を乗り越えるためにも、顧客と積極的にコミュニケーショ
ンできる人間がソリューションプロバイダーには必要であり、それがコ
ンサルティングという業務のニーズ拡大につながっています。