「一人はみんなのために、みんなは一人のために」
有名なダルタニャン物語に登場する一節です。三銃士と言った方が分かりやすいでしょうか。私自身、この話をよく読んでいないので細部は分かりませんが、お互いを助け合う場面でおそらく使われているのですよね。チームワークを高めるキャッチコピーとして定着している感があります。
このあまりにも有名なフレーズに対して、新訳を唱えている人がいることを先日知りました。きっかけはフェイス総研の社長コラムです。
『不世出の名選手にして元全日本監督、平尾誠二氏によれば、この言葉の訳は大間違いで伝えられているのだと言う。
一般的に伝わっている解釈は「一人はみんなのために、みんなは一人のために」チームプレイの大切さを表す美しい言葉として、座右の銘としている経営者も多いだろう。
しかし、平尾氏によれば「ワン・フォー・オール(一人はみんなのために)」の訳は正しいが、「オール・フォー・ワン(みんなは一人のために)」の部分が大いなる誤訳である、というのだ。「オール・フォー・ワン」の「ワン」とは「一人」という意味ではなく「勝利」を意味する“ Victory ”である、のだという。
つまりは「一人はみんなのために、みんなは勝利のために」が正しい、ということになる。』
→ http://www.faith-h.net/press/oguclm/mc090717.html
これは面白い視点だと思います。「All for won」という考え方によって、冒頭のフレーズは180度違った意味になります。これまで護送船団方式よろしく助け合って進めていくチームワークを謳っていたはずなのに、oneがwonになるだけで、勝利のためならどんな犠牲も厭わないという姿勢に変わるのです。
前述の社長コラムにもこんな話が述べられていました。
『僕たちはまず自分の足で立つことから始めよう。一人で立てもしないうちから“ All for One ”「一人のために」と、「助けられ合い」をするのは止めよう。泳げない人は、溺れている人を助けることはできない。まずは自分の足で「勝利」へと向かって立つ。そして「相乗効果」を発揮して「勝利」をつかむのだ。』
相乗効果を得るために不可欠なのは単体による自立である、というポイントはスティーブン・R・コビーが著書「7つの習慣」でも触れられていた話です。同書では、
「dependence(依存)」
→「independence(独立)」
→「interdependence(相互依存)」
という3つのステージを想定していたと記憶しています。
→
http://it-ura.seesaa.net/article/117318575.htmlWin-Winであり、シナジー効果をもたらすためには、まずは助け合い無しに一人一人が強く自立した存在でなければならず、その上で全体の勝利を目指すのが最上だということです。この実現にあたっては「One for All, All for Won」の方が確かに理にかなった解釈ですね。
ただ、システマチックな組織を作り上げるには「みんなは勝利のために」でもよさそうですが、日本人がこれまでに培ってきた感覚は、やっぱり「みんなは一人のために」の方です。All for Wonの精神が強すぎてブラック会社と呼ばれている企業を私はいくつも知っていますし、一部の人間以外を不幸にしてしまうこの精神は万人向けではありません。
スタッフや一般社員、低級管理職向けには「All for One」、激務奨励の幹部職員向けには「All for Won」を使い分けるという方がいいかなという気がします。
ちなみに、補足しますと、私が調べた限りでは「All for One」が正しいはずです。原文には「Tous pour un, un pour tous」と書かれているので間違いないと思います。英語に訳された際に上記のような解釈が考えられたのでしょうね。
posted by 吉澤準特 at 14:14
|
Comment(4)
|
TrackBack(1)
|
徒然コメント
「one for all,all for one」は大いなる誤りでありますね。
完璧に誤解でありますな。
one for allのoneは、1という意味でしっくりきますが
all for oneのoneは、前後の文脈に含まれる名詞に対する代名詞としての「それ」という意味で考えるべきです。
つまり、このセンテンスは文脈によって何にでも幅広く応用が利きますよ。
たとえば
「一人はみんなのために、みんなはチームのために」
「一人はみんなのために、みんなは会社のために」
「一人はみんなのために、みんなは勝利のために」
「一人はみんなのために、みんなは国のために」
「一人はみんなのために、みんなは家族のために」
「一人はみんなのために、みんなはお客様のために」
「一人はみんなのために、みんなは幸せのために」
等々。
いろいろありますね。