システム開発の入札(ベンダーからみるとSI案件)に競争入札(コンペ)は付き物です。コンペの目的は、入札者同志で金額を競ってもらい、提案内容の質とコストのバランスが最も優れたベンダーを決定することにありますが、時折、「こんなに詳細な要件を指定してベンダーが理解できるのか?」というRFP(提案依頼書)を見かけます。
曖昧すぎるRFPはリスクが大きくなるので嫌われますが、一方で細かすぎるRFPについても、内容理解で相当の持ち出し工数が発生するのでベンダーは嫌う傾向にあり、提案辞退によってコンペが機能しなくなるケースもしばしば聞く話です。
これに関して、半年以上前の話になりますが、公正取引委員会のグループウェア導入入札に関する契約監視委員会の議事で次のようなやりとりが記録されていました。
(ある委員からの質問)
「平成20年1月の入札には1社しか参加していない。なぜ1社しか入札に参加していないのか。私が考えるに,仕様書の条件が細かすぎたためにそれに対応できる会社が極端に少なくなったのだと思うが。必要なもののみを絞って書くべきだと思う。何となく,落札した会社しか参加しにくいものとなっているのではないかと思われる。」
(担当者回答)
「ネット接続,ファイアウォール運用や迷惑メール振り分防止などインターネット接続と接続に係る情報セキュリティ確保に関する業務を行う会社が異なると障害発生時など調整が複雑になるので一手に引き受けてもらう会社を条件とした。大手の会社にはすべて兼ね備えているところがあるので数社は入札に参加してくれると思っていた。」
「仕様書に書いたものはすべて必要なものだと考える。セキュリティはしっかりしてもらいたいのでかなり具体的になってしまった。仕様書に書く内容をどこまで細かく書くかという課題がある。また,調達までのスケジュールが非常にタイトだったので,今後は期間を長くとって多くの会社の目に触れるようにしたい。」
→ http://www.jftc.go.jp/info/zuikeitekiseika/kanshiiinkaigaiyo2.pdf
システム開発の提案というのは、RFPをベンダーに投げてから2週間〜1カ月以内で提案書を出してもらうのが一般的です。一見すると相応の期間だと思う人もいるかもしれませんが、ベンダーにとっては、RFPの内容理解、提案骨子作成、内容記述、内部レビュー、必要に応じて協力会社との事前調整というタスクをこなす必要があり、RFPの内容が過度に細かいとこれらの工数が比例して肥大化します。
私もRFPを作る側と受ける側をある程度経験していますが、細かすぎるRFPを書いた場合、3週間以上のリードタイムを設定しないとベンダーから意味のある提案書は出せませんし、出てきません。そういった事態に陥らないよう注意することが必要になりますが、これを逆手に取る方法もあります。
つまり、「特定ベンダーに決定するために、要件の過度な詳細化とタイトなスケジュールを提示する」というテクニックです。公正取引委員会の場合は、結果としてこうなってしまったのだと理解しますが、意図的に同じ状況を作り出せば、事実上の随意契約、つまり「最初からこのベンダーに取らせることが決まっている状態」になるのです。
RFPを作る方、提案書を作って応募する方は、このあたりを意識するといろいろとコントロールできるようになります。
posted by 吉澤準特 at 06:35
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業界裏話
でも中途半端な理解で同じことをやってしまうと後々トラブルにつながりそうで怖いですね。