少し前ですが、楽天技術研究所から「Web大変化」という本が出ました。
http://www.amazon.co.jp/dp/4765010589この本が何を扱っているかは目次を見てもらえばわかります。
第一章「多様化する世界」
第二章「雲の彼方」
第三章「知と我々自身の変化」
第四章「パワーシフト」
端的に言えば、現在のネット上で起きているクラウドコンピューティングを中心とした大きな時代のうねりを扱った本なのですが、現在の大変革の主役となっているテクノロジーの解説がとても充実していて素晴らしいため、ちょっとここで紹介したいと思います。
現在のネット技術のキモは、
・巨大な情報を驚くほど簡単に手に入れられること
・それらを加工する手段がとても容易に提供されていること
これに尽きるでしょう。
Web大変化を通じて、著者の森さんは、「大組織→小組織→個人」へのパワーシフトが今起ころうとしていると述べています。たとえば、Google AppsやマイクロソフトのBPOSは、ブラウザとインターネット接続さえあれば、大企業でも個人でまったく同じサービスが受けられるため、情報処理能力では差がつかなくなっています。
このパワーシフトはIT業界にも影響を与えています。分かりやすいところでは、かつては数百万円の費用請求が可能であったWebサイト作成事業は、今ではその数分の一にまで費用が落ち込みました。ユーザのITリテラシがパワーシフトを通じて大きく向上した結果です。Webページ1枚追加で10万円なんてバカげた形ではなく、純粋に工数ベースの費用請求に変化しています。
大規模な事例では、IP電話網を自前で構築した結果、SIer支払う費用を1億円以上節約できた秋田県大館市の話が顕著ですね。
http://itpro.nikkeibp.co.jp/article/OPINION/20090209/324420/ベンダの見積もりには長期のWAN費用が含まれている一方、市の費用には6人の時間外労働代1年間分が未計上という見積り前提の差異はあるものの、それでも外部に支払う費用を大幅に減らせているのは事実です。SIerとユーザとの間で得られる情報の差が商売のタネになっていたのに、それがなくなりつつあるという典型例でしょう。
クラウド化が促進されることによって、ユーザ自身ができること、端的に言えばITのDIY(Do It Yourself)はもっと進むことになります。これまでもEUC(End User Computing)という形で複雑なExcel関数シートやAccessで作ったデータベースなどを業務に組み込んでいるユーザ部門はありましたが、それがさらに拡大するイメージです。
特に、データ加工を手軽に行えるツール類がクラウド上で提供されるようになっていくと、今までIT部門が介在して提供していたサービスがユーザ自身の手で行えるようになります。例えば、Yahoo Pipesというオンラインサービスが発展すると、今までBI(ビジネスインテリジェンス)のシステムを使って実現していたデータ加工機能を代替するものになるでしょう。
サードリアリティを標榜する楽天技術研究所は、これまでに蓄積し続けてきたオンライン購買に関するデータを研究機関に公開しています。
http://rit.rakuten.co.jp/rdr/index.html(公開データ)
−楽天市場の全商品データ(5000万商品)
−楽天トラベルの施設データ(11,468施設)
−レビューデータ(35万レビュー、34万評価)
−楽天ゴルフの施設データ(1,669施設)
−レビューデータ(32万レビュー)
こういった動きは、楽天自身がパワーシフトを加速させているということなのだと思います。今年は12月18日に第3回楽天研究開発シンポジウムが開催され、そこで上記データを利用した成果なども発表されるとのこと。
http://rit.rakuten.co.jp/conf/rrds3/書籍「Web大変化」を読み込んだ上で参加すると、時代の大きなうねりを感じ取れると思います。
「Web大変化」森正弥(著)
http://www.amazon.co.jp/dp/4765010589
posted by 吉澤準特 at 09:10
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