IT業界はいつでも人手不足です。特に手を動かす側の仕事は介護業界並の売り手市場なのですが、待遇が劣悪なためにすぐに人が辞めてしまい、また求人を繰り返すという悪循環に陥っています。
そんなIT業界の求人情報の中で、近年稀に見るスゴイものを発見しました。その求人はシステム運用および運用文書作成の仕事なのですが、求められるスキル・応募資格に特筆すべき条件が挙げられています。
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1. Word(文書作成スキル)
2. システムの基本知識
3. Accessクエリ作成
4. Excel操作・マクロ作成・修正など。
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ここまでは普通ですよね。一般的に求められる水準であり、取り立てて特別さを感じさせるものは何もありません。しかし、この後に挙げられている条件から何かが漂い始めます。
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5. 毎日の残業にも耐えれる人
6. お客様、PJメンバーと調整ができるコミュニケーション力のある人
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たしかに、IT業界は残業が多い世界です。システムリリースや定期メンテナンスの日程は何ヶ月も前から決まっているので、進捗が多少遅れたくらいで期限の延期はありえず、結果として残業が多く発生することになります。でも、この求人の条件に挙げられているような書き方からすると、多分1日4時間以上の残業(つまり12時間労働)が続く日も珍しくなさそうです。
コミュニケーション能力を求めるのも分かるのですが、”プロジェクトメンバー”と調整する程度のコミュニケーション力を明記しているということは、よほどプロジェクト内の情報連携が取りにくい職場なのでしょうね。
それでも5つ目と6つ目はまだ理解できる条件です。ここまでの条件しか記載されていなかったら、わざわざ取り上げはしませんでした。この求人、極めつけの条件が最後に1つ挙げられていたのです。それがこちらです。
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7. お客様からの無謀な要求にも耐えられる精神力
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・・・なんですかね、これ。どれだけクライアントから虐げられている職場なんでしょうか。いつだってクライアントの要求は、システム運用の現場を理解していないものが含まれているものですが、それでも話せば分かるというのが普通のシステム運用現場です。それが期待できない職場だから、このような条件を備える人材を求めているんでしょうか。
それでいて笑ってしまうのは、これだけ無茶な条件を掲げている恐るべき運用現場にも関わらず、仕事の内容は、『ITILに準拠したシステム運用および文書作成・管理業務』なんです。ITILに準拠という言葉を耳にすると、運用に対する一定以上の理解があるクライアントなんだろうと思ってしまいますが、それなのに”無謀な要求”をしてくるというのですから、これを矛盾と言わずしてなんと言いましょう。
クライアントが悪いのか、ベンダーの質が悪いのかを判断するには情報が足りませんが、いずれにせよ、劣悪なIT運用環境がそこにあることだけは確かであり、システム運用が単なるコストセンターとして見られている限り、このような現場は今後も存在し続けるでしょう。
posted by 吉澤準特 at 23:37
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