この時期になると就活について書かれた記事を多く目にしますが、多くの記事で「学歴の重要さ」を取り上げる傾向が増えています。
「コミュニケーション力を磨け!」
「地頭を鍛えろ!」
という声も良く聞きますし、それは間違ってはいない努力だと思いますが、それだけで就活が上手く入ったのはリーマンショック前の好景気だった頃の話であって、就職超氷河期(大企業限定)の2011年については正しい認識とは言えません。
かつては、採用活動情報が掲載された馬鹿でかい冊子を学生に送りつける手法を取り入れており、リーチする学生の数を増やしすぎると費用対効果の面で問題が生じていたので、採用案内を送付する大学を限定するという行為は当たり前に行われていました。いわゆる、「学歴フィルター」です。
それがインターネットの普及に伴って、リクナビ等の就活サイトの活用で企業から学生へのリーチがとてもしやすくなりました。これによって、企業側の採用活動コストが割安になり、コンタクトを受け付けていなかった偏差値の低い大学からの応募も受け取るように状況は一気に変化してきました。
この頃から、多くの大企業は学歴に変わる採用基準を持つようになります。先に挙げた「コミュニケーション力」と「地頭力」を評価して採用可否を判断していたのは、もともとコンサルティング業界がやっていたことですが、これが次第に他業界にも広まり、2005年頃の好景気では「コミュニケーション力」と「地頭力」を扱った就活指南本が一気に増えます。
しかし、残念ながら、2011年現在、就活の現状は15年以上前の冊子版リクナビで就職活動を行っていた時代に逆戻りしています。皮肉にもその最たる理由は、インターネットの就活サイトなのです。
先に述べた通り、就活サイトによって企業は全ての学生に採用活動の門戸を開くようになってきましたが、これによって何が起きたかといえば、「とりあえず人気企業にエントリーしておくか」という安易な発想による応募者数の激増だったのです。
私もコンサルファームの採用活動に関与しているので肌身に感じていることですが、10名の応募者を1日で精査することはなんとかできますが、100名を精査することは物理的に不可能です。だから、最初にフィルターを掛けて書類選考の数をなんとか絞りたいと考えるのです。
企業が一番最初に取った方法は、SPI試験を使った基礎能力値による足切りでした。
最初は会場を借りた筆記試験を開催しましたが、コストが掛かるので、応募者が自宅から受験できるインターネットWeb試験に切り替える企業が続出しました。その結果、何が起きたかというと、替え玉や複数に協力による不正受験です。
SPIフィルタリングの有効性が揺らいでしまったので、これを補完するフィルター基準を探さなければなりません。そこで注目されているのが、再び「学歴」なのです。
そもそもWeb版のSPI試験だって受験者数が多ければ費用が多くかかりますし、セミナー説明会も、学生の数が多くなるほど大きくて使用料の高い会場を確保しなければなりません。だったら、優良な学生が比較的多いと思われる層だけに絞り込んでから臨んだ方が効率が良いですよね。
学歴とはこれを判断するのに「最もマシ」な指標なので使われているのです。具体的には、学歴が一定以下の学生がセミナーに参加することや試験応募を断るのです。(常に満席表示にする、など)
グダグダ書いても時間のムダなので、単刀直入に述べます。私が学生の皆さんに伝える就活基本アプローチは以下のとおり。
▼コミュ力&地頭:劣、学歴:劣の学生
→目標とする業界、やりたい仕事を見極めるためにセミナー参加し、最初の就職は中小企業を本命として活動すべき。そこでコミュ力&地頭を鍛えて業務スキルを高めたら、転職でステップアップ。少なくとも、コミュ力を向上させることができていれば、上を目指せます。
▼コミュ力&地頭:優、学歴:劣の学生
→自分の力に自信はあるでしょうが、大企業だけではなく中小企業も受けます。新卒のアドバンテージがまだまだ大きいので、できるだけ就職浪人は避けるべき。能力本位で評価する外資系を中心に活動した方がいいです。英語力があればかなり有利。
▼コミュ力&地頭:劣、学歴:優の学生
→替え玉や共闘で書類選考や一次試験を突破することはできるでしょうが、ケーススタディや面接で落とされる可能性が高いです。中小企業から準本命を決めて、そちらに進む覚悟も持つべき。そこでコミュ力&地頭を鍛えて業務スキルを高めたら、転職でステップアップです。
▼コミュ力&地頭:優、学歴:優の学生
→好きなように活動して下さい。多分、多くの企業から内定を獲得できます。
基本的に、学歴が相対的に劣る学生がまず脱落します。そこの認識を誤ると地獄を見るのが今の大企業の就活なのです。高望みも結構ですが、現実を見据えたアプローチも忘れずに。
なお、相変わらず、コミュ力&地頭を鍛える必要性はありますから、自分に自信を持てない人は鍛錬を続けるべきだと思います。手前味噌ですが、こういう資料で意識を高めることもアリだと思いますよ。
『一流コンサルティングファームからあなたが内定をもらう極意』
http://www.canter.jp/it-ura/infotop/it-ura-a01_prod_it-cons.php
posted by 吉澤準特 at 15:53
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