ソースコードと言えば、ソフトウェアの根幹をなすものであり、知的財産(特許)のカタマリを指します。この「知的財産」を強制的に開示させる法律があることを知っていますか?
以前、2009年4月に、中国がITに関するソースコード強制開示制度を発表したことで、中国が輸入する全てのIT製品はソースコード(つまり知的財産・特許)を中国政府に提示しなければならない事態に直面しました。
『中国政府がデジタル家電などの中核情報をメーカーに強制開示させる制度を5月に発足させることが23日、明らかになった。
(中略)
制度は、中国で生産・販売する外国製の情報技術(IT)製品について製品を制御するソフトウエアの設計図である「ソースコード」の開示をメーカーに強制するものだ。中国当局の職員が日本を訪れ製品をチェックする手続きも含まれる。拒否すれば、その製品の現地生産・販売や対中輸出ができなくなる。
どの先進国も採用していない異例の制度で、非接触ICカードやデジタル複写機、金融機関向けの現金自動預け払い機(ATM)システムなど日本企業が得意な製品も幅広く開示対象になる可能性がある。』
http://it-ura.seesaa.net/article/117995133.html
このニュースが世界中に与えた影響は甚大で、すぐさま日米欧からの強烈な反対意見が出され、それから1年後の2010年3月20日、「中国政府が調達する製品に限る」というラインで妥結したのです。
しかし、他国の政府にソースコードを強制開示しなければならないという最悪の前例が出来上がってしまい、これを受けて、IT大国のインドやその他新興国がどのような反応を示すのか注目を集めていたのですが、ついに2011年2月25日、中国の前例には倣わないという英断が下されました。
『携帯電話向けを中心とする通信関連設備の外国メーカーに対し、ソフトウエアの設計図にあたる「ソースコード」の提出義務づけを検討していたインド政府は、この規制を実施しない方針を決めた。「安全保障上の理由」を掲げていたが、日米欧の関連業界や政府は「先端技術の流出につながる」と反対していた。複数の地元メディアが伝えた。
(中略)
インド政府は昨年7月、国内の通信事業者に対し、導入する外国製の通信関連設備のコード提出を求める方針を発表した。「ソフトの設計図が不明なままでは、機密情報が外国に流れるおそれがある」というのが理由だった。コード提出に代わる「安全保障上の措置」の検討は続けており、内容によっては日米欧の通信関連設備メーカーの経営戦略に影響を与える可能性は残る。』
(asahi.com)
http://www.asahi.com/international/update/0224/TKY201102240509.html
ただし、ニュースが伝えている通り、通信業界にとってはまだ悩みが解決されたわけではありません。『ブラックベリーも陥落、国外サーバの存在を許さない国』のエントリーで触れたように、テロ防止を主目的とした通信内容の傍受は多くの政府が頭を悩ませている問題であり、その解消に向けて、具体的なアクションを起こす可能性はかなり高いと思います。
http://it-ura.seesaa.net/article/159261910.html
当面のところ、インドはIT情報の全面的な強制開示というアプローチを断念したとはいえ、中国のように政府調達に限定してソースコードの提出を求める可能性はまだ残されています。世界で最も人口の多い国No1とNo2が揃って同じアプローチを取るならば、第三世界の各国政府もこの流れに同調し、自国政府が調達する製品はソースコード開示が当たり前になる時代がくるかもしれません。
こうなると、官公庁系の仕事では、ソースコードが最初から開示されているオープンソースを利用というスタイルが基本になることも考えられますよね。日本政府もこの流れに同調したとするなら、これまで自社製品で囲い込んでいたメインフレーマーたちが退場に追い込まれるという時代もやってくるのでしょうか。
この流れの行方、グローバルで政府系を相手にする仕事をしている人は要注目ですよ。インドの動向、中国の政府系調達に対する欧米ベンダーの取り組み方、ロシアやブラジル政府のIT戦略。ここ数年は刮目した方がいいと思います。
posted by 吉澤準特 at 22:18
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