12月に入り、就職サイトを提供する各社は満を持してサービスを開始しました。初日深夜に学生が殺到し、サーバがしばらくダウンしてしまったというほどの活況を呈している訳ですが、何やら毎日コミュニケーションズが提供する「マイナビ」の広告ポスターが議論を巻き起こしています。
すでにいくつものブログで取り上げられていますが、代表的な以下の3つを読めば、大筋は分かります。
●マイナビ2013の広告が気持ち悪すぎる
http://lingmu12261226.blog10.fc2.com/blog-entry-96.html
【ポイント】
一連の問題提起の言いだしっぺ。マイナビの広告ポスターは、100人を超えるであろうリクルートスーツ姿の大学生をバストアップの履歴書用写真風に切り取って並べてあります。これを見て、「この広告のタイトルは「考えるすべての就活生に」というものだけれど、考える就活生はこんな広告を見たらドン引きするに決まっている。」とコメントされており、「広告を作るにあたって一体性というものも考えたのかもしれないけれど、あそこまで多くの人数の就活生に同じような服装、同じようなポーズを取らせる広告を作るのは少々やりすぎな気もする。」と加えて、「就活生は自分が「カモ」であることを自覚して、本当に信頼できる人のメッセージに耳を傾けるべきだと思う。」と結んでいます。
●マイナビ2013の広告がすばらしすぎる件
http://onomiyuki.com/?p=360
【ポイント】
狙っているタイトルですが、「マイナビのターゲットは、あれを見ても「気持ち悪い」と感じない、もしくは感じたとしてもその自身の感覚を無かったことにしてしまえるほどには身体的・生理的感度の低い学生だと思います。」とバッサリ切ってます。最後の方でも「いちっばん最初にとりあえず登録して、知ってる有名企業にかたっぱしからエントリするためのツールです。その中から内定をどうにかこうにかゲットするような学生が使ってくれればよい。自分がどうすべきかをその優れた生理感覚で把握できている学生だったら、ハナッからマイナビなんて登録しません。だから、マイナビの広告はあれで成功なんです。」ということで、カモをたくさん釣る餌として優秀だと結論づけてます。
●採用する側から見た例のマイナビの広告
http://d.hatena.ne.jp/potato_gnocchi/20111203/p1
【ポイント】
上記2つのエントリーを踏まえて、採用担当の立場から「こんな広告を真に受けてマイナビ使う奴とか採りたくねぇぇ。」とコメント。しかし、「でもそんなマイナビでも、数十人〜数百人の採用をしなければいけない立場としては、使わざるを得ない」と現状を吐露した上で、「マイナビなどを使うしかない会社は、自分をつまんない型にはめているという意味において、就活生と変わらないことをやっている」と現状を受け入れています。
以上のエントリーを読んであなたは何を感じるでしょうか。1つめは「マイナビ否定」、2つめは「皮肉型マイナビ肯定」であり、いずれも客観的な視点から。一方、3つめは採用担当側の視点からの「諦め型マイナビ肯定」になるんじゃないかなと捉えています。
みなさん、かなり突っ込んで色々考えているようですね。たしかに共感できる部分もありますが、どうしても疑問を感じてしまうのが、「この広告を見てマイナビを利用しようと思う学生はカモ!」という発想です。
これって本気でそう思っているんですかね?
正直な所、就職活動をしている学生の意識をまったく理解していないのではないかと思えてしまいます。これだけの就職格差が叫ばれている昨今、周囲の活動状況から今年も厳しいということは学生たちもひしひしと感じており、少しでも自分が有利に立ちまわる方法を多くの人が模索しています。そんな彼ら彼女らにとって、マイナビの広告を見て感じることは、「ついに就職活動が本格化してきたか」と思い浮かべる程度であり、それ以上の感情を抱いている精神的な余裕なんて、そもそもないんじゃないですか?
周囲の大人が勝手に「マイナビの広告は学生をバカにしている。これを見てマイナビを使う学生は評価をマイナスにしておこう」なんて思ったところで、企業の採用担当者はそれを自分の活動に反映させることはほぼないでしょう。私自身、採用活動に関与していますが、そんなことよりもっと見るべき項目や注視すべき指標がありますし、話題となっている広告ポスターを見過ごしている学生だってたくさんいるのですから、結局、採用活動には何の影響も無いのです。
あれは、毎日コミュニケーションズの就職活動サイトに対する学生の注意を惹きつける広告ポスターという捉え方よりは、就職活動に対する学生の心持ちを一層本格化させるためのきっかけづくりなんですよ。だって、今の学生はリクナビもマイナビも両方登録する人がほとんどです。リクナビを使う人は、セットでマイナビも登録しちゃうという就活におけるインフラ基盤みたいなものですから、別に企業広告を大々的に出したからといって、利用者が増加するというわけではないんですよね。
なので、「マイナビ2013の広告がすばらしすぎる件」という主張に対しては、特に違和感を感じてしまうのです。「自分がどうすべきかをその優れた生理感覚で把握できている学生だったら、ハナッからマイナビなんて登録しません。」って書かれてますけど、多分そういう人は本当に僅かなんですよ。無責任な感覚値で言えば、0.1%もいないんじゃないですかね。
世の中で優秀と評価されることが多い上位20%をしても、その1%にも満たない。そういう人を指して「優れた生理感覚で把握できている学生」と述べているなら、別によいのですが、そんなレアな人たちを引き合いに出しても意味がないんじゃないかな、と思う次第です。
最後に、こんなまとめURLを紹介しておきます。
●いまの就活を知ってください まとめ
http://togetter.com/li/221650
【ポイント】
Twitterのハッシュタグを使って学生からリタイア層まで幅広いつぶやきを集めています。今の採用試験や企業面接を皮肉ったコメントが多いです。不況期の強者として節度を超えた企業側の態度が問題視されています。
posted by 吉澤準特 at 22:44
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業界裏話
深読みを深読みしすぎると一週して元に戻っちゃった的なところがありますね。
少なくとも私の周りの雰囲気から察するに「深読みしてるし、反発してるけど、権力握られているんだから仕方が無い」が正直なところだと思います。
voteするとネガティブな意見が集まるんじゃないでしょうかね。
ブログを書いている人には、少し変わった意見を言ってとんがらなければ、と思う人は多く、それに引き寄せられる形で同意意見が集まっているのかもしれません。ただ、スマホや携帯が主体の学生にとって、Twitterはまだしも、はてなブックマークの意見なんてマイノリティなんじゃないかと思う次第です。だって、はてぶユーザー自体の数がそれほど多くないのですから。