2005年4月7日発行
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■■ IT業界の裏話 No.0058
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発刊総数:1158部 http://it-ura.seesaa.net/
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▼INDEX▼
■ ご挨拶
■ 裏話 :IT業界の労働環境悪化はコンサルのせい?
● メルマガ紹介 :
● 裏話募集
● 特別レポートプレゼント
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■ ご挨拶
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どうも、エンジニアAです。
もうすぐ新しいプロジェクトに異動します。今度のプロジェクトは、超
大手流通ですが、私は流通に関する知識がまったくありません。ポジショ
ンがアーキテクチャなので、さほど業務知識は求められませんが、それ
でもクライアントの話についていけるレベルの語彙は必要です。
クライアントが変わると毎回こんな感じで、電機のときも通信のときも
かなりの本を読むハメになりました。
今回も、とりあえず、業界本を読み漁ろうかな・・・
記事内容に対する、皆様からのフィードバックを受け付けております。
皆さんの忌憚のないご意見を遠慮なく書き込んで下さい。
コチラからどうぞ → http://it-ura.seesaa.net/
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■ 裏話 :IT業界の労働環境悪化はコンサルのせい?
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興味深い内容の記事があったので、今回はこちらを取り上げます。
→ http://tinyurl.com/6ww9x
(要旨)
コンサルティング企業が全体を仕切っているプロジェクトは多いが、
破綻しているプロジェクトが多いのも事実であり、成功したプロジェ
クトは、ほんの一握り。
・労働時間が長く、終電がなくなっても残るコンサルタントが多い。
労働時間の長さでアピールするのはナンセンス。
・報酬が異常に高い。月額200万〜400万ぐらい請求される。
その割り
に大した仕事もしないコンサルタントが多い。彼らを一人切れば、
他の優秀なSEが2、3名雇える。
・主に顧客への提案資料をパワーポイントで必要以上に作りこんでい
るコンサルが多い。もっとシンプルで十分。
・システムを知らない人間が語る机上の空論が多い。
例)10万件の顧客データを手入力しろ、など
ゆえに、コンサルはIT業界の労働環境を悪化させてる元凶である。
一般に、コンサル(ここでは外資系コンサルを指す)は長時間労働であ
ることは間違いありません。
理由は色々あるでしょう。自分の一生懸命さをアピールしたい、本人が
優秀過ぎて仕事が集まってしまう、逆に無能のせいで仕事が溜まってい
る。
しかし、そもそもクライアントが求める要件が厳しくなっていることを
見逃してはなりません。
5年前、1日10万アクセスの販売サイトを構築するのに求められる期
間は、要件定義からシステムリリースまで、だいたい8ヶ月〜1年で作っ
ていたと記憶しています。
ところが、今は同規模の販売システムを構築に求められるのは4ヶ月か
ら半年です。
なんと、IT業界はたった5年で生産性が倍になってしまったようです。
でも私の周りの人は、前と変わらないスピードで動いていますよ。おか
しいですね、別に人員が倍投入されているわけでもありません。
そうです、働く時間がさらに長くなったから、システムリリース時期を
早めることができるようになっただけなのです。
本当は、プライムコントラクター(コンサルや大手SIベンダー)が、
クライアントの無茶なスケジュールに「NO!」と言わなければなりま
せんし、事実、プロジェクトを受注した人もそう考えています。クライ
アントも、言ってることが無茶だと分かれば矛を収めてくれることが少
なくないです。
では、なぜ長時間労働を強いられるのか?
ここに来て、もうひとつ大きな事実が判明します。それはプライムコン
トラクターの見積り能力です。
昨今叫ばれているのですが、正確な工数見積りができる人材が本当に少
なくなっています。
どんな能力も鍛えなければ成長しません。プログラミングにしろ業務設
計にしろ、それを経験するごとに人は成長していきます。これは、プロ
ジェクトの工数見積りにも言えることなのです。
熟練のプロジェクトマネージャが手がけるプロジェクトはなぜ成功する
のかといえば、不確定要素も含めて、大まかなスケジュールを予想して
必要な工数を算出することができるからです。
ITバブルという言葉が登場する前は、プロジェクトマネージャとして
振舞えるポジションの人間は、今よりも圧倒的に少なかったのです。で
すから、一人当たりがマネジメントするプロジェクト数も多かった。
ところが今はどうでしょう。90年代後半からプライムコントラクター
におけるIT要員は増加の一途を辿っていたのですから、今のプロジェ
クトマネージャは管理経験のあるプロジェクト数が絶対的に少ないです。
本来なら、すでに上のポジションにいる人間が、プロジェクトマネジメ
ントの妙技を部下に伝える必要があったのですが、社内的にそのような
教育制度が未整備な企業は多く、結果として、プロジェクトマネージャ
として合格レベルの力を持っている人間の数が足りていません。
※ 現場のコンサルタント・エンジニアとして優秀でも、プロジェクト
管理が優秀である保証はどこにもありません。野球の言葉で言えば、
優れた選手が優れた監督というわけではないのです。
他に、要件定義が曖昧なままスケジュールを進めてしまう、仕様凍結の
徹底がなされていない、など理由は色々ありますが、ほとんどのことは
プロジェクトマネージャの経験が足りないことに帰結すると思います。
コンサルティングファームや他の大手SIerと比較して、IBMの信
頼が高く思えるのは、企業内部のトレーニングがしっかりしているから
です。現在は、各企業とも社内の教育制度を充実させようと試行錯誤し
ています。
あともうひとつ忘れていたことがありました。
労働組合(ユニオン)の存在。
コンサルティングファームにはユニオンが存在しないケースがほとんど
です。ですから、労働時間に関する内部圧力が発生しづらいので、ワー
カホリックになってしまう人は、他社に比べて多いです。
最近は労働基準局の指導が厳しくなっていることに加え、従業員のモチ
ベーションを高めるために、労働環境を改善しようという動きはコンサ
ル業界では一般的になってきています。
今回は長時間労働の原因は何かという点を考えました。コンサルだけで
なく、全ての企業に共通して言えることが見えたと思います。
次号は、コンサルタントのフィーについて考えます。
最後に一応、参照記事先に書かれていたアクセンチュアやべリングポイ
ントの名誉のために言っておきますが、IBMや富士通、日立、NEC
などが担当してどうしようもないことになってしまったプロジェクトを、
彼らが収拾した事例、結構あります。みんな失敗してるんです。
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● メルマガ紹介 :クライアントに喜ばれるためにできること
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仕事は結果が全てと言う人もいますが、過程も良ければクライアントの
満足度もさらに高まります。ライバルが多い業界なら、少しでもクライ
アントに喜ばれることなら、惜しむことなく実践すべき。
心を尽くすことで相手も信頼を寄せてくれるのです。
ですが、伝える術を知らなければ何も始まりません。
まずは伝える術を学びましょう。
対人コミュニケーションを向上させるには?
〜ココロからのコミュニケーションを大切に
http://www.geocities.jp/nekoyashya/blog/mm_touroku.html
posted by 吉澤準特 at 17:46
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Comment(7)
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TrackBack(2)
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業界裏話
あと4/6,4/7と「仕事の密度」という記事にコメントさせていただいたのですが、
今日になって削除されているようです。
「最近のコメント」の一覧には表示されてますが、そこからページを表示させると
エラーとなって自分のコメントが出てきませんでした。
特に削除されるような内容ではなかったと思いますが私の批判記事が理由でしょうか?
そうであれば、なおさら残念です。
今確認しましたがちゃんとリンク機能していました。最近seesaaは負荷がかかっていて、日中でもシステム停止することがありますから、運が悪かったのかもしれませんね。
基本的にコメントなどの削除はしませんのでご心配なく。
何度見てもコメントが見れなかったんですが、
自宅PCでは見れました。(何で?)
あとTBありがとうございました。
こちらも過去記事TBさせてください。
これもコンサルには耳の痛い話ですが
実話なんでお気を悪くなさらないで下さい。
この業界の問題提起と捉えていただければ幸いです。
何度見てもコメントが見れなかったんですが、
自宅PCでは見れました。(何で?)
あとTBありがとうございました。
こちらも過去記事TBさせてください。
これもコンサルには耳の痛い話ですが
実話なんでお気を悪くなさらないで下さい。
この業界の問題提起と捉えていただければ幸いです。
トラックバックありがとうございました。
しかし、記事を読む限り、何故私のサイトにトラックバックをされたのか、関連が良くわかりませんでした。
プロジェクトスケジュールの文言にひっかかったのかな?
しかし、非常に面白い提言だと思います。我々の一面を非常に良く捉えており、私もひとりのコンサルタントとして反省すべきだと痛感します。
とは言え、少し残念な部分もあります。できれば、もう少し俯瞰的に問題の所在を明らかにし、検証してほしたかったです。
つまり、言わずもがなですが、『コンサルのPM能力低い』をAとし、『IT業界の労働環境悪化』をBとすれば、「AだからB」は正であるが、「BだからA」は必ずしも正ではないですよね?
すなわちこの問いに対する結論は、『コンサルのPM能力低い』は『IT業界の労働環境悪化』の原因のひとつである、というくらいのことであり、議論としては小さくまとまってしまったように思います。
コンサルタントのような「システムを知らない人間が語る机上の空論が多い。」というのはもっともですが、それに対して意義ある提案をせずに黙って従うSEがいるのでしょうか?(→それこそ問題だと思いますが・・・)
「労働時間が長く、終電がなくなっても残るコンサルタントが多い」とか「主に顧客への提案資料をパワーポイントで必要以上に作りこんでいる」ことが、すなわち、SEやPG、ましてやクライアントの作業工数を圧迫したり、長時間労働を強いていることにつながるのでしょうか?
今までの記事を全部見ていないので大変恐縮ですが、このままですと愚痴の域を越えませんから、IT業界全体を捉えた問題として、更に議論を発展させてはいかがですか?
出すぎたことを申してすみません。
非常に良く書けていると思ったので、それだけに残念に感じました。
コメントありがとうございます。
リンク先のタイホナさんが書かれた記事に対する私の見解、というスタンスで思っていることを記述したため、全体としてまとまりに欠ける文章になっていることは、ただただ私の未熟さによるところです、申し訳ありません。
PMがプロジェクトにおける責任者であることを思えば、全部がそうとは言いませんが、プロジェクト成否についてかなりの影響を持っていることは確かだと思っています。
>コンサルタントのような「システムを知らない人間が語る机上の空論が多い。」というのはもっともですが、それに対して意義ある提案をせずに黙って従うSEがいるのでしょうか?(→それこそ問題だと思いますが・・・)
意義のある提案をして下さる方は多いですが、大体の場合、作業者への説明は実装直前になることが多く、根本的な解決ができない事が多かったというのが私の経験です。記事元のタイホナさんも同じだったのでは、と勝手に推察していました。
milliomeさんも同じような経験をされたことはありませんか?
>「労働時間が長く、終電がなくなっても残るコンサルタントが多い」とか「主に顧客への提案資料をパワーポイントで必要以上に作りこんでいる」ことが、すなわち、SEやPG、ましてやクライアントの作業工数を圧迫したり、長時間労働を強いていることにつながるのでしょうか?
milliomeさんがおっしゃっているのは要件定義フェーズ以前の話でしょうか。確かにその時期はSEさんやPGさんがプロジェクトに参加することはありませんが、プロジェクトの予算は設計・開発フェーズまで含んでいることが弊社の場合は多いです。
プロジェクトの予算を管理したことがありますが、コンサルタントの残業代は予算をかなり圧迫します。我ながら高かった・・・(^^;
設計フェーズ以降なら、コンサルタント5人が毎日数時間残業すると、プログラマクラスの方数人分が雇えなくなるほどなんですよ。
もっともっと議論したいところですが、本業が忙しくて今は家に帰ると寝てるだけ。この議題は面白いので、今後も継続して取り上げていくことにしますね。