ITコスト削減という言葉を聞いたことがない人は、IT業界では皆無かと思います。では、実際にITコスト削減の活動に参加したことがある、実施を強いられたことがあるという人はどれくらいいるでしょう。
普通なら、こういう質問には「実際にやったことはないですね」という具合の、知っているけど直接携わったことはないという回答が多数でてくるわけでありますが、「ITコスト削減」に限って言えば、そんな回答を返す人は相当少ないと思われます。
なぜなら、ITコスト削減という言葉が”特別なプロジェクト”として取り組む時代はすでに終わり、今や、ITは最初からコスト削減されていることがデフォルトで求められる状況にあるからです。具体的には、2008年9月のリーマンショック以後、コストセンターとしてのIT部門に対して、多くの企業で同取り組みが着手され、あれから5年近くが経つ現在では、何らかのITコスト抑制の仕組みがあらゆる企業で導入されています。
とはいえ、あなたの組織でやっているITコスト削減が本質的なレベルであるかと問われたら、すべてについて「YES」と返答できるでしょうか?
この質問に自信をもって答えられない方のために、今回は某戦略コンサルファームが当時発表したレポートをベースにして、”やってはいけないITコスト削減策”を示します。反面教師として、参考にしてみてください。
1つめのNG:「直近のコスト削減を重視する」
目の前のITコストを削減することだけを考えていると、将来の競争力まで削ぐことになってしまいます。ベストは、3年間で段階的に運用保守コストを下げること。新規投資の絞り込み/サービスレベルの一律切り下げなどで無理やりITコストを下げると、業務の品質が失われます。
2つめのNG:「表層的なコスト要素ばかりを意識している」
廃棄すべきなのになんとなく持ち続けているシステムのような過剰資産の所有、単価が高いITスタッフ・ベンダー・コンサルや、非効率な仕組みによるシステム業務の生産性の低さなどがITコストの増加の原因としてよくあげられますが 、これらは単なる事象です。なぜ、これらの事象が引き起こされたのかを分析してこそ、実質的なコストドライバーを見つけることができます。アーキテクチャ/組織・人/業務プロセスの3面が最初の切り口です。
3つめのNG:「固有のベンダーに頼りきる」
一定以上の規模があったり、長く存続している会社であれば、付き合いの多いベンダーがいることでしょう。彼らは様々なソリューションを持っていると思いますが、1社の固有技術を使い続けるしかない状況を生み出すのは危険です。特に、ITの外部委託を進めすぎて、企画機能以外は自社に残っていないケースでは、ベンダーからのレポートルールを明確にしないと、アーキテクチャの設計がブラックボックス化してしまいます。ベンダーの植民地と化している状況では、属人運用をなくすことも、他技術を選択可能であるようにし続けることも困難となり、根本的なITコスト削減ができません。
4つめのNG:「新しいソリューションにすぐ目を向ける」
仮想化技術、クラウドなど新技術を活用したソリューションはどんどん登場します。耳触りの良いセールスコピーから色々な期待を抱くことでしょう。ですが、その投資を回収するためのビジネスケースをしっかりと描けているでしょうか。たとえば、下手に仮想化技術を全面導入するより、開発環境以外は旧態依然のプラットフォームを堅守し続ける方が、新しいライセンスも発生せず、ITスタッフにもスキルが累積されているため、総合的にはITコスト抑制に寄与することが往々にしてあります。
5つめのNG:「IT部門だけで効果を出そうとする」
ITは業務の競争力、効率性を高めるために存在します。システム開発に際しては、まず業務要件があって、そこからシステム要件を整理しますよね。つまり、ITと業務はセットで考えるものです。にもかかわらず、コストについてはなぜIT単独で削減しようとするのでしょうか。ユーザー側の業務変革が伴って実現されるコスト削減策もたくさんあります。
以上、5つのITコスト削減にありがちなNGアプローチを取り上げました。参照したのは、2009年2月にローランドベルガーが公開している機関紙「視点」の55号からです。私自身も様々な企業のITコスト削減プロジェクトに関与してきましたが、このレポートが発表されてから4年経って思うのは、3つめと5つめのNGポイントをやってしまっている企業は思いのほか多いということです。
あなたの組織でこうしたNGがされていないか確認してみることをオススメします。
posted by 吉澤準特 at 19:58
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