米ナスダック(NASDAQ)がシステム障害で全銘柄の取引を3時間停止したというニュースが金融業界を駆け抜けています。
事件が起きたのは米国時間の8月22日午後0時14分(日本時間:8月23日午前1時14分)のことでした。株価情報を配信するシステムでトラブルが生じたために株式売買ができなくなったため、全銘柄の取引を停止したようです。
以下はブルームバーグの記事からの引用です。
『米証券取引所運営会社2位のナスダックOMXグループは22日午後0時過ぎに全銘柄の取引を停止した。取引停止は他の多くのプラットホームにも影響を与えた。株価情報を配信するフィードシステムにトラブルが発生したとナスダックはウェブサイトで説明した。
(中略)
BMOキャピタル・マーケッツ(ニューヨーク)のデリバティブ(金融派生商品)担当シニアトレーダー、マックス・ブライアー氏は電話インタビューで、「本当に怖いのは、われわれのせいではない障害のために何らかのリスクを負わされることだ」と指摘。「情報が途絶えたり、取引ができないと、リスク管理やポジションテークが阻害される」と述べた。ナスダックはニューヨーク時間22日午後3時25分(日本時間23日午前4時25分)前後に取引を再開した。取引再開後、アップルの株価は499ドルから504.10ドルの間で大きく変動した。』
参照:http://www.bloomberg.co.jp/news/123-MRXZ1F6S972H01.html
問題を引き起こしたフィードシステムというのは、株価の時価情報を証券売買システムへ配信するシステムのことであり、取引が発生するたびに参照されるものです。個人投資家が使用している売買ツールなどであれば、1秒間に2回程度の配信を受けるくらいの頻度で株価データを配信しており、取引が活発なタイミングでは1秒間に数百回ものデータ配信が更新が発生するため、非常に高負荷なシステムと言えるでしょう。
このフィードシステムが機能を停止すると、株価の現在値を参照できなくなるため、最適な価格での株式売買取引もできなくなるため、全銘柄の取引を停止させるしかなくなります。今回のナスダックでは、このケースに該当しているものと思われます。
そういえばナスダックは、つい先日の8月20日、ゴールドマンサックスの売買プログラムにバグがあり、誤発注が発生したことでもニュースになっていましたね。株式オプション需要への対応を図るためにゴールドマンサックスが利用している内部システムが不正確な指値注文を誤って作成し、取引所に送信したとのことです。
当方のエントリーでも、1年前に米国証券仲介大手のナイトキャピタルグループが誤発注のため、たった45分で340億円を失った話を取り上げたことがあります。
『1日の米株式市場ではニューヨーク証券取引所(NYSE)に上場する約150銘柄が異常な値動きを示すトラブルが起きた。(米証券仲介大手)ナイトキャピタルグループは2日の声明で、自社の誤発注が原因だったと認めた。代償は大きい・・・』
(たった45分間で340億円の損失、高速自動売買システムの恐怖)
参照:http://it-ura.seesaa.net/article/285534033.html
現在の株式売買は、取引の過半数をシステムによる自動売買が占めており、ちょっとしたプログラムのミスで非常に大きな損害をもたらすリスクを抱えています。加えて、1秒当たりの取引量が10年前の数倍以上になっており、わずかなシステム停止がもたらす機会損失も膨大な額に上ります。
※以下は各取引所の反応速度。10年前は10〜100倍以上の遅さだった
●東京証券取引所 :1000分の0.9秒 (900マイクロ秒)
●ロンドン証券取引所 :1000分の0.125秒(125マイクロ秒)
●ニューヨーク証券取引所 :1000分の0.300秒(300マイクロ秒)
●シンガポール証券取引所 :1000分の0.074秒(74マイクロ秒)
先の記事でトレーダーがインタビューで答えていたコメントは非常に重いですね。
「本当に怖いのは、われわれのせいではない障害のために何らかのリスクを負わされることだ」
もはや何のためのシステム、取引なのか分からなくなってしまうほどの状況であると当事者たちも認識しているなか、金融システムはどのように変化し、規制されていくのでしょうか。
posted by 吉澤準特 at 08:33
|
Comment(0)
|
TrackBack(0)
|
業界裏話