IT業界という言葉が指す裾野は広く、防衛産業に勤めていたIT作業者が米国の国家機密を公にした最近のスノーデン事件などで知られているよう、軍事の世界にもITは幅広く利用されています。今回はその中でも究極の位置にある『核ミサイル』の発射システムについて、驚愕の事実をお伝えします。
世界で最も核ミサイルを抱えている国と言われている米国では、核ミサイルを発射する権限を有しているのは大統領です。しかし、大統領が「核を発射しろ」と命令するだけではミサイルは飛びません。正確ではありませんが、だいたい以下のような複数の要素が絡んだ手順を踏んだ後、核ミサイルは発射されます。
【0】関係者が大統領へ核ミサイル発射を提案する
【1】大統領が発射意思を表明する
【2】関係省とホットラインを結び、大統領本人が関係閣僚に対して、
自己を証明するセキュリティ情報の口頭通達と
通信機器による電子的な認証を行う
【3】再度、大統領が発射意思を表明する
【4】複数の管制官が同時に操作し、発射システムを有効にする
【5】核管理施設、艦船の担当者が発射ボタンを押す
【6】核ミサイル発射
しかし、第二次世界大戦直後から冷戦初期ころまではもう少し管理が緩やかであり、PAL(Permissive Action Link)という装置に米国大統領が発射コードを入力することで、核ミサイルの発射が可能となっていました。
このPALについて、大統領が入力する発射コードは、なんと20年もの間、00000000(0が八桁)という非常に単純なコードで運用され続けていたということが、以下のサイトの記事で世界中に広まっています。
『すべての米国核ミサイル(ミニットマン)の発射コードは20年間00000000だった』
http://www.todayifoundout.com/index.php/2013/11/nearly-two-decades-nuclear-launch-code-minuteman-silos-united-states-00000000/
有識者の間ではすでに知られているニュースであったことは、WIREDの記事から知ることができます。
『この事実はもともと、ミニットマンの格納庫で勤務していた元米空軍士官で、2000年にNPO「World Security Institute」を設立したブルース・G・ブレア博士が2004年に論文で初めて明らかにしたものだが、コロンヴィア大学のコンピューター科学担当教授で安全保障システムについて教えているスティーヴン・M・ベロヴィンも、(2009年に)この事実を再び紹介している。』
http://wired.jp/2013/12/04/launch-code-for-us-nukes-was-00000000-for-20-years/
なぜこんな馬鹿げた運用になってしまったかと言えば、1962年のキューバ危機、当時の米国防長官が米国内の弾道ミサイルにPALを設置した直後、軍部は独断で00000000というパスコードにリセットしてしまったからだそうです。一刻を争う状態でミサイルを速やかに発射できるようにすることが目的だったのかもしれません。
結果として、そこから20年もの間、発射コードはずっと00000000だったそうです。先ほど紹介したTodayIFoundOutのサイトに書かれていたことをWIREDでは次のように和訳表記しています。
『このコードは、ミサイル格納庫で勤務するスタッフにはほとんど秘密ではなかったと述べている。「実のところ、われわれ発射担当者に与えられた発射チェックリストでは、地下にある発射室のロックパネルを2回確認して、誤ってゼロ以外の数字をパネルにダイヤルしていることがないように確認するよう指示されていた」』
ちなみにリンク先には発射コードを入力するPALの装置が写真で掲載されています。こんな装置&固定パスワードで世界中の核がコントロールされていたことに驚きを覚えますが、よく考えてみれば、自分の身の周りでも、ITシステムの運用管理は結構低レベルな運用で凌いでいる組織は多いので、シビアな現場ほどシンプルな仕組みで管理される傾向があると言えるかもしれません。
posted by 吉澤準特 at 13:24
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