米国の国防総省(ペンタゴン)ではあるプロジェクトが推進されています。それは、007やミッションインポッシブルを彷彿させる、まさに映画の中の世界を実現する技術であり、とりわけ、これからの高度情報技術社会で必要性が高まるものです。
いくつかのサイトで取り上げられた話題なので、すでに知っている人もいるかもしれませんが、この活動は「Vanishing Programmable Resources」(VAPR)と呼ばれるもので、要するに「自爆するようプログラムされた機器を作る」ことが目的です。
プログラマブルというキーワードを聞くと、最近はSDN(Software Defined Network)という仮想配置をプログラミングできるネットワークを思い浮かべるIT業界の人々が増えてきましたが、この技術は「特定条件で機器本体を損傷させる」ように自爆アクションをプログラミングできるものです。
この「自爆するIT技術」を米国が本格的に必要とするようになったのは、中東で立て続けに起きている米国無人兵器の鹵獲が大きな原因です。なにせ、米国製の無人兵器を鹵獲し続けたイランでは、今や自国で同等の無人兵器を作り上げてしまいました。
こうした事件を背景に、米国は「奪われて困るものは、奪われた時点で消し去る」ことを考えるようになり、冒頭のVAPRを推進するに至っています。
最新鋭の兵器にはプロセッサの類が必ず搭載されているため、それが自爆して消え去ることができるようプログラムされていれば、目的を達成することができます。そこで、国防総省はプロセッサを扱うメーカーなどに本件への提案を求めました。
その結果、自爆するIT製品の開発を340万ドル(およそ3.5億円)で受託したのがIBMです。
→ http://www.zdnet.com/ibm-lands-deal-to-make-darpas-self-destructing-vapr-ware-7000026044/
映画のような技術にしては安い開発費と思うでしょうが、強化されたガラス基板上の1つ以上の装置が無線電波によって破損する仕組みを利用し、CMOSデバイス自体を粉砕することができるということです。
CMOSというのは、デジタル回路の実装には必ず用いられる電子機器のことであり、皆さんの使っているPCには、起動時に必ず読み込まれるBIOS情報を記録するメモリーとして組み込まれています。
なお、VAPRに関する開発に取り組んでいるのはIBMだけではありません。同じ時期にアプリケーションベンダーとして有名なBEAシステムズは、やはりコマンドによって消滅するよう設計されたテンポラリーセンサーの開発を国防総省から受託しています。
→ http://www.baesystems.com/product/BAES_166970/vanishing-programmable-resources-vapr-transient-sensor
このセンサーは、光・温度・振動を感知するものであり、読み取った環境データに則して自動的に消滅要否を判断する仕組みになるようです。
私見ですが、こうした消滅技術は盗聴・盗撮行為を助長する機器にも応用されるようになり、犯罪行為の証拠が隠滅されてしまうというリスクが顕在化するかもしれません。そうした時代が到来したとき、自分の身を守るためにどうしたらよいのでしょう。
そのときにならなければ答えは出ないかもしれませんが、重要なことは、こうした技術が世に出始めていることを知っておく姿勢を持つことだと考える次第です。これに限らず、IT技術のニュースには定期的に耳を傾けておくことをお勧めします。
posted by 吉澤準特 at 05:29
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