「大きすぎて潰せない(Too Big To Fail)!」
TBTF問題とも呼ばれますが、この言葉が世界で流行したのは、2007年サブプライムローン問題の頃からです。その会社がつぶれてしまうと困る人が世界中に溢れて社会混乱を招いてしまうから、政府としては潰したくても潰せない、という話なのですが、果たしてそれは本当かという懐疑的な声も当時は挙がっていました。
しかし、2008年に米国を代表する投資銀行リーマンブラザーズが破綻・倒産してしまった結果、64兆円にも上る巨額負債の煽りを受けて、世界中の金融機関・企業が大変な損失を被り、連鎖的に生じた世界不況から経営危機に陥ったところもたくさん出ました。
たとえば、米国絡みでもこれだけの巨大な事例があります。
※ベアスターンズの破綻・救済はリーマンショックより前なので除外
・ファニーメイ(連邦住宅抵当公庫) →破綻・国有化
・フレディマック(連邦住宅抵当公庫) →破綻・国有化
・リーマンブラザーズ(投資銀行) →破綻・倒産
・ワシントンミューチュアル(貯蓄貸付組合) →破綻
・ワコビア(銀行・証券等) →破綻・救済買収
・GM →破綻・復活
・クライスラー →破綻・救済買収
こうした経験から、大規模な金融機関を潰してしまうと世界規模の大不況を引き起こすことを痛感した先進国(G20)によって、「規模が大きすぎて潰したら大変なことになる銀行リストを作ろう」という声が強まります。
こうして出来上がったのが「Global Systemically Important Banks」、略してG-SIBと呼ばれるリストです。
2013年11月時点で、以下の29行が対象とされています。日本の銀行では、みずほ銀行・三井住友銀行・三菱東京UFJ銀行が含まれています。国別に整理されたリストがwikipediaにあったので、そちらのリンクを参考までに紹介しておきます。
『List of systemically important banks』
→ http://en.wikipedia.org/wiki/List_of_systemically_important_banks
【バケット4】(+2.5%の資本追加)
HSBC
JP Morgan Chase
【バケット3】(+2.0%の資本追加)
Barclays
BNP Paribas
Citigroup
Deutsche Bank
【バケット2】(+1.5%の資本追加)
Bank of America
Credit Suisse
Goldman Sachs
Group Crédit Agricole
Mitsubishi UFJ FG
Morgan Stanley
Royal Bank of Scotland
UBS
【バケット1】(+1.0%の資本追加)
Bank of China
Bank of New York Mellon
BBVA
Groupe BPCE
Industrial and Commercial Bank of China Limited
ING Bank
Mizuho FG
Nordea
Santander
Société Générale
Standard Chartered
State Street
Sumitomo Mitsui FG
Unicredit Group
Wells Fargo
バケットというグループは、グローバル活動/規模/相互連関性/代替可能性/複雑性という5つの指標のスコアから判断されるもので、最高ランクはバケット5です。今のところ、そのレベルに該当する銀行はありません。
→ https://www.financialstabilityboard.org/publications/r_131111.pdf
これらのTBTF(Too Big To Fail)な銀行では、何かあっても国民の税金が惜しみなく投与されて救済されるということで、政府や市民の監視団体がギラギラと目を光らせて、経営の健全性をチェックしてきます。
ですから、そうした期待?に応えるため、これらの銀行では特にITを使った高度化の取り組みが盛んです。古くはアセットライアビリティマネジメント(ALM)という仕組みはIT化されてきましたし、昨今ではサイバーセキュリティにおける高度な防衛技術の導入も進んでいます。最近のビッグデータやアナリティクスというキーワードからは「監査」がホットトピックです。
<何をやるのか、の例>
『内部監査の現状と高度化への課題』
→ http://www.boj.or.jp/announcements/release_2014/data/rel140107a10.pdf
<どうやるのか、の例>
『データ分析導入による内部監査の高度化』
→ http://www.shinnihon.or.jp/services/advisory/itr-and-a/column/2014-06-05.html
IT業界にとっては、この辺りが商機として熱いところになっていくのではないかと思います。上記は日本国内の話ですが、米国や欧州だけではなく、アジアでもこうした観点での機能強化はITによる実現が求められるものです。
銀行の中で鍛えられたソリューションは、高いセキュリティを求めるその他の企業にも転用できるため、機密度の高い設計図や研究データを扱う国内企業にも活用する余地がでてくるでしょうね。
posted by 吉澤準特 at 14:52
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