人はいつまで「新人」扱いをしてもらえるのでしょうか。
普通の世の中では入社1年目を新人と評価し、2年目以降は若手社員と捉えます。1年目であれば、大抵の失敗は許され、2回3回の失敗も、「まあそのうち慣れるよ」とねぎらいの言葉をかけてもらえることもよくある話です。人を大事にする組織や、業界内の動きがゆっくりとしているところでは、2年目の若手レベルであっても新人と同じ扱いでミスも許容してもらえますし、採用人数が少ない組織では、入社3年を過ぎてもずっと新人扱いが続くところもあります。
ですが、コンサル業界ではそれが認められません。
たとえば、ファーストアサインと呼ばれる、新入社員研修後に初めて配属されるプロジェクトであっても、クライアントへは「特定業務や業務知識をある程度学んだプロフェッショナル」として紹介されます。実際には1週間ばかりの準備期間しか与えられないのですけど、それでもプロフェッショナルです。
プロフェッショナルですから、新人によくあるケアレスミスや、仕事の背景を理解しないままに言われたことにただ従うだけの働き方は許されません。相手よりも深い洞察、理解、先読み行動が求められます。
考えの浅い報告や資料では、客先に提示する前にスーパーバイザーのコンサルタントに手厳しいレビューを受けて撃沈することでしょう。最近ではパワーハラスメントの改善が世に広まってきたために減ってきましたが、それでも人格否定に近いネガティブな指摘を受けることはあります。
コンサルタントが好きな言葉に「バリュー」というものがあります。バリューとはクライアントへ提供する仕事の中身が価値あるものであること、単位時間あたりの報酬に見合った価値が出せているかを確認するときなどに使われる言葉です。
「その資料、丸一日かけて作っていたけど、それだけのバリューはあるの?」
「うちら、1時間で1万円以上の報酬をもらっているの分かっている?」
などとスーパーバイザーから言われたりします。小売業のプロジェクトなら、「クライアントの製品1000個の利益と同じ価値がその資料にあるの?」なんて言われることもありますね。
もちろん、生半可な資料をクライアントに見せれば、要求水準の厳しい相手にはそれくらいのことを言われてしまうのですから仕方ありません。コンサルタントのチーム全体の信頼を保つためには、中途半端なアウトプットはクライアントに見せる前に潰しこむ必要があるのです。
私の知るところでは、入社直後の研修では一切習わなかったのに、ファーストアサインでMS-Accessの専門家になってしまった人は、机の中にAccessの入門書を隠し持ち、早朝や深夜の作業時にこっそりのぞき見ていました。
コンサルタントの世界で新人扱いされるのは、新入社員研修の期間くらいでしょう。ファームによりけりですが、ものの2か月3ヵ月で新人卒業を余儀なくされます。このあたりの感覚になじめない新人コンサルタントはスーパーバイザーから「いつまでも新人気分でいたらダメだよ」とたしなめられます。
入社直後に「学生気分」を捨てるよう求める組織は多いですが、わずか2か月足らずで「新人気分」から脱却しろというのは、コンサルファームかブラック企業か、といったところですね。
こうしたスピード感ある現場を乗り切るために、先輩社員のノウハウをチェックリストにまとめたり、内部勉強会を定期的に開催したり、新人のスキルを底上げするための活動をするのはとても大切です。たとえば資料作成のスキルであれば、「外資系コンサルが実践する資料作成の基本」に含まれているような項目をチーム内でシェアし、同水準同粒度のチームメンバーが作れるようになれます。
あなた組織では、新人気分が許されるのは入社後何か月くらいまででしょうね。
posted by 吉澤準特 at 04:41
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