仕事をすることの意味を考えたことはありますか?
私たちは普段、仕事という言葉と作業という言葉を同じ意味で使っていると思います。辞書を調べてみると、両者とも似たようなことが書かれているため、なおさら同じ意味で考えてしまいそうです。
でも、本当にそうなのでしょうか。
次の2つの例を考えてみましょう。
『Aさんは上司から、下期の経営課題を解決するために必要となる社内システムの改修費用算出を命じられました。』
『Bさんは上司から、上期の経営課題のうち、解決しなかったものをリスト化して提出するよう頼まれています。』
さて、AさんとBさんに与えられたタスクについて、何か違いが分かりますか?
Aさんのタスクは、所与の条件である下期経営課題を基にして、システムに求められる追加機能やその費用を、”自分で考えながら”まとめていかなければなりません。Bさんのタスクは、所与の条件である上期経営課題に対し、それをまとめるだけ、つまり”自分で考えず、与えられた指示に従って”まとめていけばいいだけです。
私は、Aさんのやっていることを「仕事」、Bさんのやっていることを「作業」だと認識しています。仕事は、その背景にある内容を積極的に理解しながら、新たな価値創出に取り組むものです。それに対し、作業とは、与えられた指示に沿って何かを行うことを意味します。
作業はどんな職場でも必ず発生するものですから、それ自体を否定するつもりはありません。注意しなければならないのは、本来「仕事」であるべきものが「作業」と化していないかということです。
作業と化した仕事は、その成果も薄っぺらで、指示内容を逸脱する状況が発生しても対応することができませんが、本当に仕事をしているなら、指示内容の背景も理解して取り組んでいるはずですから、不測の事態にも臨機応変に対応できるものです。
ここまでの話は10年前にブログでまとめたものですが、最近読み直したとき、ふと「英語で仕事と作業の違いはどう説明するのだろう」と思いまして、ちょっと調べてみました。
ぱっと思いつく範囲でWork、Job、Taskといった単語が浮かんできますが、はたしてどのワードが適切でしょうか。
Web上で調べてみると、作業=Work、仕事=jobだという話がありました。あなたの職業がシステムエンジニアで今は資料を作成をしているとしましょう。「What's your work now?」という質問と「What's your job now?」という質問、その答えを考えてみると、前者は「資料作成」で後者は「システムエンジニア」になるからだ、というロジックです。
しかし、よく考えてみると、今やっている内容がもっと価値創出に直結するものであればWorkだって仕事と同義になります。
また別のサイトでは、作業=Taskで仕事=Jobだと説明しているところもありました。たしかにTaskには作業をイメージを想起させる表現がありますが、任務や課題という意味合いも備えており、やはり作業という意味で固定的に捉えることは難しいです。
他のサイトでは仕事=Workと考え、広範な仕事を表す言葉はWorkであるとの説を述べていたりもしました。
人によって単語の捉え方が違うということは、英語では仕事と作業を一言で分類するのは難しいということなのでしょうか。気になったので、外国人の同僚に聞いてみました。
結論としては、作業の単位が当てはまるのはTaskという表現だが、Taskには仕事という意味も含まれるため、ワンワードで使い分けるのは難しいということです。また、Taskを複数集めた範囲の内容をWorkと表現するため、WorkとTaskの違いは仕事の範囲の大きさの違いでしかないそうです。たとえば、WorkはシステムエンジニアでTaskはDB設計という具合です。
つまり、最初に示した「仕事と作業」を英語で説明するならば、Taskに関する捉え方の違いを説明することになり、決してWorkやJobやTaskという表現を比べることにはならないのです。
Taskの中でも肉体的に苦労する作業をLaborと表現しますが、単純作業全般を意味するものではありません。また、定型作業の英語表現でRoutine Workというものがありますが、定型以外の作業にはWork以外にTaskもLaborも含むことができるため、やはりWork=作業とするのは強引ですね。
振り返ってみると、「仕事」と「作業」に異なる意味を持たせて教育している日本というのは、こういった精神的な成長を促すものが多いな、という気がしました。ストイックな社会であるほど、こうした傾向は強いのでしょうか。さらに踏み込んで調べてみたいです。
posted by 吉澤準特 at 03:30
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