現在、IT業界が空前の人手不足に喘いでいるのを知ってますか?
たとえば、転職市場におけるベンダー各社の動きで一番分かり易いのが、
中途採用の紹介料を軒並み倍増しているという点です。
今年の初め、人材紹介会社やヘッドハンターに支払う紹介料金の相場は、
大体20%程度だったと記憶していますが、それが今や紹介料40%!年収
が1000万円の人物を企業に紹介したら、400万円が紹介報酬として貰える
のです。
なぜここまでIT業界が人手不足に陥っているのか?
色々な要因がありますが、最近とても深刻になっているのが、「そもそ
もIT業界に魅力を感じる人が減ってきている」という事実でしょう。
10月30日に情報処理機構(IPA)がIPAフォーラム2007でこんな企画を実
行しました。
『IPAはIT業界の重鎮と理系学生による討論会を開催した。テーマは
「IT産業は学生からの人気を回復できるのか」だ。
討論したのは、東京大学、筑波大学、日本電子専門学校の現役学生
10人とIT業界の重鎮2人。IT業界の重鎮とは、自身ではメインフレ
ーム開発しか行ったことがないというNTTデータ 取締役相談役で、
情報サービス産業協会 会長の浜口友一氏と、TISの代表取締役社長
岡本晋氏だ。加えてIPA理事長の藤原武平太氏が答えた。』
(@IT記事より引用)
→ http://it-ura.seesaa.net/article/64006019.html
この討論会の趣旨は、学生達にIT業界の良さを理解してもらおうという
ものだと思いますけど、残念ながら彼ら全員に理解してもらうことはで
きなかったようで、セッションの最後は学生に対しての「将来ITの仕事
に就いてみたいか?」という質問について、学生10人のうち2人は、
「絶対に嫌」
という回答でした。
先のリンク先で述べられていますが、今回の討論会で最大の失敗は、パ
ネラーにIT業界の重鎮を読んでしまった点に尽きると思います。
私から見ても、彼らの回答は到底容認できるものではありません。
例えば、「IT産業へのイメージ」に対する学生の回答として、「きつい
、帰れない、給料が安いの3K」に加えて、「規則が厳しい、休暇がとれ
ない、化粧がのらない、結婚できない」の“7K”というイメージが挙げ
られましたが、それに対するNTTデータ相談役の浜口氏の答えは、
「3Kの“帰れない”は、帰りたくない人が帰れないだけ。スケジュール
管理の問題だ。」
という怒りを通り越して呆れてしまうものです。
営業や上位管理職が勝手に決めたスケジュールで血反吐を吐いているプ
ロジェクトを私はいくつも見てきました。どう贔屓目に考えても、彼の
発言は真実を伝えていません。
システム開発や運用の現場で働いている方にとってこの発言は、プライ
ムベンダーの経営層がいかに現場の状況把握に無頓着・無理解であるか
を知る良いきっかけになったのではないでしょうか。
ところで、学生側の発言には、IT業界の人間として「なるほど」と納得
するものもありました。
「工程ごとにいろんな呼称があるが、ITコーディネータやITアーキテク
トなど、具体的に何をやっているのかさっぱり分からない。横文字だ
けが並ぶ」
という学生の問い掛けは、実は私も同じような感想を持っていました。
欧米のスタンダードが幅を利かすIT業界では、役割によって名前を変え
るべきだという流れによって、IPAが公開するITスキル標準の中では様々
な肩書きが定義されています。
こういった細分化は職能のサイロ化を招きがちですが、一番の問題は、
職務内容が分かりにくい名称が増えているところにあるのではないかと
考えています。
仮に、ITコーディネータと聞いて職務内容がピンと来る人、IT業界内に
もどれだけいるか少々疑問です。
最終的に、IT業界に対する魅力をどれだけ訴えかけることができたのか、
私は現場にいなかったので詳細を知ることはできませんが、こういった
フォーラムに参加する学生にも関わらず、「絶対に嫌だ」という意見で
終わった方が2人もいたのですから、それほど良さは伝わらなかったのだ
と思います。
もっとも、「帰りたくないから帰らない」などという発言をする人物の
IT業界分析の話なんて、到底信頼する気になれません。少なくとも私は
そう考えます。
早くこういった方々が業界からいなくなることを期待します。
おまけですが、半年前に開催したIPAのイベントで、IT業界に対する学生
の不人気理由としてクリエイティブ性が失われている点が挙がってまし
たけど、今回のやりとりを見る限りでは、それ以前の次元の話だったよ
うですね。
参考:前回イベントのやりとり
→ http://it-ura.seesaa.net/article/64006019.html
posted by 吉澤準特 at 08:12
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