「IT業界を不人気にした重鎮の大罪」というエントリーのコメントで、
この業界を取り巻く人々の姿勢についても反省を促したいと書いていま
したが、もう少し具体的に述べます。
自分のドッグフードを食べる、という表現を聞いたことがありますか?
SIerや各ベンダーは自社のソリューションや製品を持っているところが
多いですが、本来クライアントやカスタマーに提供するサービスを使っ
て自社の業務効率化や改善を図ることを指す言葉です。
元々はWindows NTを開発していたマイクロソフトが、テストを兼ねて自
社のシステムに開発バージョンを導入した際、「自分のドッグフードを
食べる」と表現したことから使われるようになりました。
最近では、ノキアのCIOがこの言葉を踏まえて、より高品質な自社ソリュ
ーションを自分達に適用するということを、「自分のフォアグラを食べ
る」などと表現していましたね。
(参考:自分のフォアグラを食べよう)
→ http://it-ura.seesaa.net/article/65008865.html
このドッグフードを食べるということについて、2003年のCNETの記事で、
ちょうどマイクロソフト社の当時CIOが次のように答えています。
『--「ドッグフード」というコンセプトはどこから生まれたのですか。
「自分たちの製品のリリース前に、研究所ではできない、より実際的
なテストを行うことで、製品がどのように機能するのかを知ってお
きたいという思いが原点となっています。」』
この精神を持ってSIを行っているベンダーがどれほどいるでしょうか。
例えば、サーバソリューションを売りにしているベンダーもしくはSIer
なら、自社のシステムの根幹をその技術で賄っていなければダメです。
プロジェクト管理を得意分野にしているのコンサルは、もちろん自社内
のプロジェクトも同様に管理を行っていることが望まれます。
「自社ではないが他社事例が豊富にあるから大丈夫」
そんなことを呟くベンダーはこの本質をまったく理解していません。大
切なのは、どれだけ自分自身が痛みを知っているかという点です。
自分自身で痛みを知ることは、その痛みを経験しないためにはどうすれ
ばいいかを真剣に考えることにつながります。その結果、クライアント
を実験台にすることもなくなり、失敗や炎上するプロジェクトを減らす
ことにもなるでしょう。
相手に対する強いコミットメントを約束しない限り、他社事例がいくら
豊富にあろうとも、所詮は他人事に過ぎないのです。
あなたがクライアントにとって真に信頼できる戦略的パートナーとなる
ためには、クライアントの利益を第一に考えることが必要です。
スティーブンRコビーは著書「7つの習慣」の中で、win-winの関係を築
く重要性を説いていますが、Dependency(依存関係)から脱却し、
Inter-Dependency(互恵的相互依存関係)を目指すことを強調してます。
いつまでも相手を実験台にするようなやり方では、そのような関係は永
遠に望めません。中長期の視点では、むしろマイナスに働くでしょう。
もちろんこれはSIerだけに向けて述べているわけではなりません。クラ
イアントにしても同じようにSIerとの戦略的パートナー関係を築くよう
努力することが必要です。
「SIerを生かさず殺さず使い倒そう」などと考えているようでは、優秀
なSIerはどんどん離れていくでしょう。
最後にIT業界に属している皆さんに伺います。
「あなたは誰のために業務を行っていますか?」
posted by 吉澤準特 at 09:46
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